番外編 西アフリカ某国の日記 7

2020年2月16日

いつも通りのパトロール番。朝7時半に事務所に行ってコーヒーを飲んでから第2外人落下傘連隊出身のアレックスとこれも第2外人落下傘連隊出身の新人のアルトゥールを連れて南東のサイトの全ての防御用ポストを見て回った。以前は、もう辞めてしまったジャンの運転で僕は助手席だったので道を覚えているかと心配だったけれど、ほぼ毎日作業していたサイトなので、迷わず全てのポストを回る事が出来た。

2時間ほどかけて回って事務所に戻った後は、事務所のある「工場」のサイト内のまだ完成していない防御用ポストで作業している現地の作業員に指示を出しているうちに午前中は終わってしまった。

午後はアルトゥールだけを連れて廃鉱2カ所を見て回った。一番遠くの廃鉱はなかなか景色がいい所で、ジャンが辞める前の日のパトロールでここへ来たのでアルトゥールにも見せてやったら彼も感心していた。

 

鉱山の安全を確保しろという難題を受けているのに、とにかく材料が手に入らないので、外人部隊でよく言う「système D(Démerder)」(システムD=ある物でなんとかするシステムという事)を駆使する。

防御用の「タイヤ」もなかなか使用の許可が出ず思ったより古タイヤの数が少ないので、タイヤの代わりにするために現地の作業員は1日何十個もの砂嚢を作っている。砂嚢の積み重ね方を知らないしまずは砂嚢の作り方を教える。朝元気なうちは砂嚢に詰める砂の量は多い。午後の砂嚢はいい加減疲れているので砂の量が少ない。そうなると砂嚢を積み上げた時に凸凹になるので均等にするためには砂の量は一袋につきシャベル何杯と決めた量を入れなければならない。多過ぎると砂嚢と砂嚢の間に隙間が出来るのであまり詰め過ぎてもいけないのだ。その辺は工兵部隊の経験が役に立った。それと、砂場には結構大きな石が混じっているので石を取り除くようにも指示を出す。敵の銃弾が石の混じっている砂嚢に当たってその石が砕け飛んで「破片」になってこちらが怪我をするのでそれを防ぐ意味もある。

積み重ね方も重要なのでそれも説明する。家の作り方と同じで、レンガは半分ずつずらして積み重ねるのと同じで、砂嚢も同じように積むのだと説明したので理解してくれた連中の作った防御用ポストはそれなりの出来だったが昨日回った「工場」内の防御用ポストは理解出来てなかったようで、綺麗に縦一直線に積んであった。なのでもう一度説明し直した。2人の作業員だったけれど、そのうちの一人は気まずそうな顔をしていたので今理解したのだろう。

砂嚢を50個ほど積み直しを命じた。ゆっくりでいいから確実にやってくれよと声をかけて17時を回っていたので開放した。

 

今夜はここ「工場」のサイトから出る不要資材の置き場から太いケーブルを盗む奴らがいるという事で日没後にそこの付近に隠れて泥棒が来るか見張れとロランから指示が出たのでピエロの運転でパトロール犬とそのハンドラー、僕と3人と1匹で夕食後19時に出かけた。どうやってこの太いケーブルを切るのかはわからないけれど、5メートルほどに切ってそれを担いでバイクで逃げるのを何度か目撃したとの情報は入っていた。目的地に着いて1時間ほどサーモカメラを覗いて通るバイクなどを監視していたけれど泥棒には遭遇せず。

 

明日の朝は4時のパトロールがあるので、1時間ほどの監視をサッサと終わらせて部屋に戻った。

そのケーブルというのは結構な太さで、外側の被膜が薄く、「銅」で出来ているので、それを売れば結構な金額になるから現地の人間はよくここに来てケーブル以外にも色々な物を盗んでいくのであった・・・。

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ここは金の鉱山だけれど、現地の人々には「金」以外にも「金目の物」がここには沢山あった・・・。

 

※安全上国名は明かしません