B070 見事な景色と雑用

1989年6月23日(金)

 

今日は午前中に行軍、午後に街でパレードをすると言う事だ。パレードがあるのに午前中行軍するなんてどう言う事だ???おまけに今朝は30分も皆んなより早く起こされて下士官の朝食の準備をさせられた。髭を剃る暇もなく、おまけに朝食を食いっぱぐれた・・・。

7時15分に行軍に出発した。沢山の丘や山を登った。10時半過ぎ、一番高い山の頂上に着いて驚いてしまった!とんでもない素晴らしい景色だ!1900メートルぐらいの高さだったけれど、眼下には綺麗な街並みや国道など生まれて初めて観るカレンダーなどでしか見た事がない景色だった。

 

小隊で記念写真を撮ったあと休憩になったのでやっとパンを食べる事が出来た。荷物は軽くて良かったのだが、小隊旗を銃口に刺したMAS -49と言うFA -MASの前に使われていた小銃を持たされたのには閉口した・・・。とにかく持ち辛いのだった・・・。昨日から下士官の食事の準備の雑用などで気分が悪い所にきてこの始末だ。早くカステルノダリーへ戻りたいものだ。

MAS -49やFA -MASのMASとは、Manufacture d’Armes St-Etienne:サン・テチエンヌ造兵廠という意味だ。

MAS -49は別名FSA(Fusil Semi-Automatique=半自動小銃)とも呼ばれ、1949年に正式採用された。

FA -MASの「FA」は、Fusil d’Assaut(突撃銃)と言う意味である。この歴史あるサン・テティエンヌ造兵廠は現在では閉鎖され、フランス製の小銃生産は終わってしまった。だから現在のフランス軍ではFA -MASは順次退役してドイツのヘッケラー&コッホ社のHK416Fという小銃(Fはフランスを意味する)が配備され始めている。HK416Fの生産に使う材料の鉄鋼はフランスからドイツへ輸出される鉄鋼を使うという契約がなされている。値段を抑える為だ。H&K社の生産する銃器は精度も性能も一級品で良いけれど値段も一級品だからだ。

日本と違ってフランスではこれらの退役した武器は発射機構を無くし安く手に入れる事が出来るので、コレクターなどが購入する事が出来る。これを書いている2019年10月時点では安い物だと300ユーロ(日本円で約3万6千円)の値段が付いている。もう少し値段が下がったら記念に1丁欲しいところだ。日本には持って帰る事が出来ないと思うので、日本では「東京マルイ」のFA -MASを手に入れて飾っている・・・。遠目に見る分には良く出来ている。

 

今日の行軍は片道15キロメートルぐらいだったので往復で30キロメートル弱というところか???しかし下山は壁の様な山の斜面を滑りながら1時間半ぐらいかけて下った。過去に人が歩いた事がない様な前人未到の藪の中も慎重に足場を確認しながら歩いた。

 

キャンプ場に着いたら再び下士官の食事の準備をさせられた。何故サボっている連中にやらせないのだろう。本当に気分が悪い・・・。しかしこういう理不尽があるのが外人部隊だと割り切る事が出来ないと5年の契約は全う出来ない。あと4年とちょっと、階級が上がらないとやっていられないのだろうな?という事をこの時悟った・・・。

でも、こういう嫌な事を次の日まで引き摺ると困るのは自分だ。こういう事にも慣れる必要がある。

今はまだ自分は下っ端なのだ・・・。

 

外人部隊在隊中に « ne cherche pas comprendre » (理解しようとするな!)とよく上官に言われたし後に部下にもよく言ったものだった・・・。言われたことを何も考えずやれ!

 

読んでくれた人、ありがとう