別の夜の事。晩飯に何を食べたか記憶に無いけれど、ホテルに着いて部屋で翌日は何処に行こうかなどと考えながらフロント脇の売店で買った雑誌をパラパラめくっていた。なんか小腹が空いた。そうだ!ルームサービスを頼んでみよう!(なんかこういうシチュエーション、映画とかであるよなぁ!カッコイイ!)部屋の備え付けの電話のところにルームサービス用のメニューが置いてあるのは知っていた。ルームサービス用の内線番号も大きく書いてある。あ〜、緊張する!電話して簡単な軽食かなんかをなんとか注文して部屋番号を伝える。10分ぐらいして白い厨房用の服を着たフランス人の調理場の人がハムやソーセージの盛り合わせ、チーズ、それにバゲットを3センチ幅に切ったのが何切れか乗っている小さめのトレーを持ってやって来た。幾らかと聞くと28フラン(89年当時のレートで約571円)だと言う。現金での支払いらしい。財布を見せて今持ち合わせの現金は無いから明日フロントの金庫に預けている日本円を両替して払うと片言の英語で伝えたけれど、これじゃ埒があかないと思ったのか、もう一度僕の財布の小銭を数えて「これでいいよ!」と言ったかどうかは分からないがその小銭を全部持っていった。全部で10数フランだったような気がする。食べ終わって、トレーは部屋の外に置いておけば勝手に持って行ってくれると言うのは何処で仕入れたのかはわからないが知識として持っていた。部屋にいたので、短パンとTシャツ、裸足であった。
その時事件は起きた!
トレーを持って部屋の扉を開け、部屋の外の脇の方の邪魔にならない所にそのトレーを置いた途端、僕の後ろで「バタン!」と音がした・・・。「しまった!やってしまった!」一応ドアを開けようと悪あがきをしたがもちろん開くはずがない・・・。こういう結構いいホテルは、ドアが油圧式で自然に閉まると言うのはなんとなくガイド本で読んだ気がした。いろいろなホテルの部屋のドアに纏わる失敗談もだ。その失敗談のところに今もう一つの新しい失敗談が加わったのだった。部屋着というか僕は短パンとTシャツ、おまけに裸足であった。部屋の前に突っ立て誰かが来るのを待っていても仕方がないのでエレベーターでフロントまでその格好で降りて行ってスペアキーを貰って一件落着。
フロントはそういうハプニングに慣れているみたいで、短パンTシャツ、裸足の僕を見てすぐに何が起きたのか察してくれた。さすがである。もちろん彼らは「クスクスッ!」と笑う事も忘れなかった。
読んでくれた人、ありがとう