B112 訓練開始

1989年10月3日(火)

さぁ、いよいよ今日からコマンド訓練コースが始まるのだ!

いきなり背嚢、FA -MASなどフル装備での8キロの駆け足で始まった。個人で走るのではなく小隊で纏まって走るのだ。遅い人間を置いていく事は許されない。何かの任務では一人でも置いていく事は出来ないからだ。中尉が「下りの多いコースという事だ!大丈夫だ!」と出発前に小隊の全員の前で言った。大丈夫じゃ無い僕はどうするんだ???

いつもは1時間以内という決まりがあるけれど、ここでは55分以内という事だった。

確かに下が多かったけれど急な下り坂のところでは肺が裂けそうになるぐらいのスピードで走った。僕は後ろに着くと遅れると思い、先頭の中尉の後ろを走った。なんだか今日は調子がいいぞ???—— 何と47分で小隊纏まって走りきる事が出来た。ゴールに着いて急いで乾いたシャツと戦闘服の上着を着て2〜3キロ離れた射撃場に移動した。弾倉1個分の25発を渡されて急いで弾倉に詰める。ドジェイ軍曹の分隊が50メートルほど脇で僕らの分隊の突撃射撃の援護をした。僕らの分隊は横一列で射場の所から駆け下りて何度か繰り返し伏せては撃ったが殆ど命中していない様であった・・・。

トラックの所まで1キロほど歩いた。吐く息がまるでタバコの煙の様に白いけれど体は熱かった。

隊舎に戻ってFA -MASの掃除。

午後には各種の体力テストがあった。いつも登れる5メートルの高さのロープが今日は登れず教官のノートに名前を書かれてしまった。初日からなんという事だ・・・。その後まだ終わっていなかったFA -MASの手入れを夕食前までやった。明日はどんな訓練が待っているのか???

 

1989年10月4日(水)

ここのコマンド訓練コースには、障害物の基礎を覚えるところは「Pistes Blues」(青いコース)と言った。2、3メートルの高さだったり5、6メーターの距離や長さの障害物で比較的簡単だという事だった。その青のコースで基礎を覚えたら、同じ障害でも大きくて高さがあったり長い距離の障害物は「Pistes Rouge」(赤のコース)と呼ばれる事を知った。スキー場みたいだ。スキー場だと初心者は「Pistes Vert」(緑のコース)から始まって、初級は「青」、中級は「赤」、上級者は「Pistes Noir」(黒のコース)と大体なっている様だ。軍隊の場合は選択肢がない。「黒のコース」は実際の戦闘を指す事になるのか???

 

ただそれらの障害物は僕等の隊舎やその前にある練兵場からは全く見えない様になっていた。なので要塞の門を入って練兵場に出ただけではここがどんな場所かは全く分からない様になっている。兵舎の造りや国旗掲揚台など、一般のフランス軍の基地と殆ど変わりがない。

 

隊舎の脇や裏側に獣道の様な、草むらの中に何度も歩いたのか地肌が出ている所がありそこを駆け足で移動して森の中に入っていくと最初の障害物が突然現れる。そこに着けば残りの障害物が見えるという訳ではなく、残りの障害物も上手く森の中に隠れたりして見えない様に要塞の内外に配置されていた。

 

つづく

 

読んでくれた人、ありがとう

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