B111 お湯が出る!

1989年10月2日(月)

朝食後すぐに出発して、昼少し前にLes Rousses(レ・ルッス)という所にある正規軍第23歩兵連隊に到着した。なんだか来てはいけない所に来てしまったような気持ちになった。入り口には「ルッス要塞」と表記があった。山の上にある。今のところは陽が出ていてそんなに寒くはないけれど、それから3週間、寒さとの闘いだろう。

fort_des_rousses

なんと、西ドイツ軍(まだベルリンの壁は崩壊していなかった)から一個中隊僕らと同じように訓練に来ていた。

訓練出発前に営倉を終えて出て来ていたウェンダーは早速一言二言声をかけていた。

レーションの昼食を終えてから宿泊する隊舎の周りなどを見て回った。古い建物で、フランス軍のどこにでもある造りのしっかりした建物だった。テント生活を予想していたけれどちゃんとした隊舎での寝起きだ。何と!ここではちゃんとお湯も出る。シャワーもちゃんとしたのがあってこれなら何とかやっていけそうかな?

ベッドは連隊のものと同じ「Lit 70」(70センチ幅のベッド)だった。ロッカーだけは一昔の小型のやつだったけれどたいして荷物もない。着替え程度なら余裕で入る。

午後は自由だったので少し昼寝をした。食事の状況は悪い。一つのテーブルに8人座るのだけれど、腹を空かせたその8人の兵士にたった1本のバゲットしか出なかった。食事はステンレスの区分けされたプレートで量もひどく少なかった。夕食後に酒保に行ってみた。色々な物が売っていて僕らの連隊に比べてすごく値段が安くて驚いた。外側がナイロンのウインドブレーカーの生地で内側がモコモコしている軽いパーカは、連隊より70フランも安かった。ビール28杯分だ!ほぼ1ケースのビール程の差があった。いかに外人部隊の酒保が暴利を貪っているかが判った。ただでさえ安い給料を酒保でさらに巻き上げられているのだ!

連隊の酒保では、ビールとコカ・コーラ、オランジーナと炭酸なしのオレンジジュースのフリテというのが全ての飲み物だったけれど、その全てが2フラン50サンチーム(約50円)なので、僕はビール以外は殆ど買った事が無いし、同じ値段ならみんなビールを選ぶ様だった。水は水道の水だ。フランスの水は石灰分が多くて、グラスを明るい所に掲げると細かい石灰分が水の中に舞っているのが分かるぐらいだった。でもこの頃は全く気にならず、みんな同じ様に水道水を飲んでいた。

 

出発直前に小隊で希望者は寝袋用のゴアテックスのカバーを900フランで注文出来たけれど、僕は兵卒なのでそんな高い買い物は出来なかった。品物が届いてドジェイ軍曹は買うのをやめたらしく一つ余っていると言うので仕方なく大金を払って手に入れた。行軍の時背嚢の中で一番重い寝袋を出してその代わりそのカバーで寝るつもりだった。今だから言えるけれど、それは大正解だった。このコマンド訓練では、新兵訓練の時の様にパンツ一枚で寝る訳では無い。すぐ移動出来る様にしておかなければならなかったので、僕は半長靴と上着を脱いで上着と一緒にカバーの中で眠ったのだが、行軍で汗をかいた上着やズボンは朝起きたら体温で乾いていたしとにかくカバーが軽い事がこの時は大事だったのだ。ただ一つの問題はこれを買ったせいで給料が殆どなくなってしまった・・・。

 

今夜はみんな20時頃にはベッドに入ってしまった。今のうちに休んでおこうと言う事かな?僕も別に起きていなければならない訳では無いので、みんなと同じく寝る事にした・・・。

 

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