どれぐらいの頻度で回ってくるか分からないが勤務中隊になると、その中隊が営門の警備についたり食堂の雑用など連隊内の雑用を行う。衛兵勤務は営門の警備だが、その他に緊急の初動班がありそれは戦闘服で装具をつけFA-MAS携行のであった。待機室は入り口がコードを押さないと入る事が出来ず、無線機や実弾も準備していた。連隊が誰かの攻撃を受けたりした時のための準備だった。その為に実弾を渡された時の訓練も始まった。いつ時実弾を装填するのか?撃つ前の誰何の仕方、警告の出し方などのためだ。
という事はそろそろ僕らもそういう勤務につくのだなと言う事が分かって来た。実務も大変だったが準備も大変であった。まず制服に綺麗にアイロンをかけなければならない。アイロン台などと言う便利な物は無い。テーブルに毛布を敷きその上にシーツを敷く。それがアイロン台であった。また、袖などのシワを取る為にはシーツを綺麗に丸めて袖の中へ入れてアイロンをかけると言う事を覚えた。この時は冬服だったのでズボンに綺麗にアイロンがかかっていれば大体オーケーであった。上着の方はほとんどシワがなかったので楽であった。中に着るシャツにもアイロンをかける。アイロンは外人部隊兵に無くてはならない物だった。僕も一等兵になった時に自分個人のアイロンを買った程である。
アイロンが終わると2足支給されている半長靴のうちパレード用にとっている履いてない方の半長靴を磨く。支給されている靴磨き用のブラシは片方が短くて固く、片方は長くて柔らかいと言う風に両側2種類のブラシが付いていた。柄の部分の先端は楔形になっていて泥などを落とすのに便利だった。僕が教わったのは硬いブラシの方で靴墨を塗りそのあと柔らかい方で磨くという事だった。縫い目の部分にちゃんと靴墨を塗らないと皮の色が出てやり直しを喰らう。靴紐は丸紐でなく平らなやつであったので、表に見える部分はよじれる事なく平らに見えるようにしなくてはならなかった。外人部隊のシンボルはもちろん白いケピなのだが、それと同じぐらい有名なのが赤のふさの付いた肩章と青のカマーバンドであった。それに緑色のネクタイ。カマーバンドの巻き方にも決まりがありそれも教わった。意外とネクタイの結び方を知らない連中が多く、僕はそいつらのネクタイを何本も結んでやった。
中隊の裏で衛兵全体の交代の仕方や、営門にいる衛兵の交代などの練習も始まった。ただ単に近ずいて行って肩を叩き「おい、交代だぜ?」そんな交代はしない。上番は伍長のかける歩調に合わせ下番の真正面に位置して止まる。伍長の号令でお互い「捧げ銃」の敬礼をして「直れ」「抱え銃」の号令の後2名共右に一歩ずれる。上番、下番とも5歩前へ進み回れ右をする。再び2名共右へ一歩、そうすると見事に上番と下番が入れ替わる。再び「捧げ銃」をして、下番の衛兵は伍長の号令で「抱え銃」をし衛兵詰所へ向かい衛兵の交代が完了する。 頭の中で全体像を想像すれば何も難しい事では無かった。
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