翌朝は起床後にいつもより念入りに半長靴を磨き新品の戦闘服を着た。そして古い戦闘服を背嚢に仕舞い昨日予行演習をした中庭に移動した。ロサ・ファテラ上級軍曹は式典用戦闘服姿であった。両腕に階級章をつけて勲章もついている。
昨日の様に整列した。そして「外人部隊勅諭」の練習もした。僕らの中の1人が前に出て「外人部隊勅諭」の最初の一語を言う。それに続いて僕らも言うのだ。ケピはまだビニールに入ったままだ。
そのうちに中隊の管理小隊の連中が来てテーブルなどを並べ始めた。それから、なんと飲み物などを運んできた!
外人部隊では何かあると「Pot」(一杯、酒を飲む集まり)が事あるごとにしょっ中ある。それをするのは今回が初めてであった。誰かが移動や訓練コースで小隊を離れる事になった時などに行われる。軍曹としてここ第4外人連隊に配属になった時など、その年の「初牡蠣」が採れたと言う事で連隊長以下の士官、下士官が制服で集まったと言う事もあった。牡蠣は食べ放題でおまけに白ワインも飲み放題であった。
式のために中隊長がやって来た。そのほかにも中隊の士官や下士官が数人来ていた。連隊と契約している写真屋のオヤジも来た。背が低くて白髪で目がくりっとしているこの髭のオヤジはユーモラスであった。一生懸命に写真を撮っている。このオヤジの店はカステルノダリーの街中にあり、数年後はかなり世話になった。M. Bouchard と言い今はその息子が継いでいるという。
ルアール伍長の指示でケピのビニールを外しポケットに入れた。いよいよだ。
改めて「右へ倣え」をして列を整えた。中尉が中隊長に集合を報告して式が始まった。アイルランド人のサフィールが代表で前に出た。彼の言葉の後に「外人部隊勅諭」をゆっくりではあったが第7項まで全員で声を合わせて言った。
そして中隊長の訓示があり、その最後に「ケピをかぶれ!」の言葉の後に一斉に僕たちはケピ・ブランを被った。
この瞬間晴れて正式の「外人部隊兵」になったのだ。
中隊長から指揮権下達があり中尉が敬礼してそれから皆飲み物が沢山用意されているテーブルに移った。ビール、コーラ、オレンジジュースなどいろいろあったがまだ朝なので僕らは誰一人ビールに手を出さなかった。伍長の目が光っていたせいもあった。
解散となり中庭を出ると、連隊のバスとトラックが迎えに来ており、荷物をトラックに、銃は携行してケピを被ったまま連隊に戻るためにバスに乗り込んだ・・・。
読んでくれた人、ありがとう。