B 239 シェフ・ロドリック

    授業が滞りなく進んでいく。覚える事は段々高度になっていく。それと共に下士官としてのあり方を学ぶのだ。フランス外人部隊の下士官として、間違いは絶対に許されない。銃の諸元であったり命令の出し方であったり。なので、僕が新兵の頃は軍曹に聞けばなんでもわかったし教えてくれたという気がしたのである。軍曹に聞けば全て問題は解決したので、神様がいたらこんな感じか?などと思ったものだ。

    最近授業の最中補給庫にいけと命令されることが多くなった。これがなぜかと言うと、この年、フランス軍全体の制服が新しくなるのでその採寸のためであった。今まで下士官の制服は、色が兵士たちと違い薄い黄土色であった。「僕もこれを着られるのかぁ!」と憧れの様な気持ちでいたが、新しい制服はライトグレーで「これが本当に陸軍が着るのかよぉ!」と言う意見が多かった。だけれど階級章は肩章式になっており、古いシステムの糸と針で袖に縫って固定するのではなくなったので良い感じがした。僕らは細かく採寸されて、制服は体に合う様に思われた。肩幅や袖の長さなどだ。それからケピも採寸された。下士官となると黒ケピになるのでそれ用であった。こうして段々と下士官になる準備が整って行った。

    この時、連隊で行軍があるときまって、下士官候補生の小隊が連隊の先頭を務める事になった。その行軍でベルギー人のシェフ・ロドリックがありえない失敗をすることがあった。当時、普段インストラクターはピストル携行が普通であった。しかし今回は連隊総出なので、士官用に拳銃が足りなくなり、シェフ・ロドリックはFA-MAS携行に変えられたのであった。行軍が始まった。何度目かの休憩の時であった。シェフ・ロドリックは自分が拳銃携行だと思い込んだのであろう。自分のFA -MASをその辺の草むらに置き忘れてしまったのだ!幸い生徒であるジブチ人のマームッドがそれを見ていて何気なくを装おってシェフのFA -MASを手に取ると、次の休憩地点まで運んだそうだ。それに気がついたシェフ・ロドリックは途中にこれも何気なくを装おって手を出し自分の銃を受け取ったそうだ。ジブチ人のマームッドは小柄でジブチ人と言うことで何かと文句を言われがちではあったが、この事件以来文句を言われる回数が劇的に減った。僕はマームッドとは仲が良かったので一安心した。

                 読んでくれた人ありがとう。

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