B 211 日番伍長の1日について

日番伍長とは日番とついているけれど、1週間新兵達を監督する。

朝は起床が5時なので、その前に起きて洗面、髭剃り、そして戦闘服を着てケピを被り起床に備えるので、日番伍長の時は朝4時半か4時に起きていた。点呼票は週番軍曹によって点呼表を週番室へもっていくだけで良い場合もあるけれど、軍曹によっては中隊広場に中隊整列もあって、その時は点呼10分前ぐらいには整列していなくてはならない。なので、入隊したての新兵達ばかりだと集合に時間がかかる場合がある。まだ民間人のような新兵達は大変である。フランス語を理解しないからだ。

6時に点呼でそれが終わると隊列を組んで食堂へ行く。小隊40何人いて伍長は最後に入る。朝食だ。ただこの時は皆を監視しているので僕は食べている暇はなかった。一通り朝食を取ったな???と感じたらすかさず「第2小隊外へ整列!」と大声で怒鳴る。まだ食べ終わっていない兵士もいるがそんなの関係無しであった。食堂の階段を降りて外に出るとなんとか整列している小隊を引率して中隊へ戻る。中隊の駐車場で停止。「第2小隊廊下に整列!」の号令をかける。全員新兵は走って2階へ上がり廊下に整列する。僕は持っていた紙を読み上げる。「中隊掃除、誰某、誰某、誰某、誰某、誰某、週番当直室前、行け!」「トイレ掃除、誰某、誰某、小隊事務室掃除、誰某、誰某、廊下掃除、誰某、誰某、」と割り振っていく。残った兵士たちは自室の掃除などだ。それらを見て回る。止まっている暇はない。そのうち軍曹連中がやってくる。敬礼し朝の挨拶をして異常なしを報告する。まず握手をして軍曹は頷く。

それが終わると7時15分に中隊隊舎の周りのゴミ拾いがあるので外に集合する。週番伍長の号令でゴミ拾いが始まる。一通り終わると小隊毎に整列する。7時30分が中隊集合なので、歩調をとりながら定位置へ小隊を連れていく。その時、服装の乱れや半長靴の磨き具合などを点検する。そして日番軍曹がやってくる。小隊に「気を付け!」の号令をかけて軍曹に「第2小隊、定員何名、現在員何名、異常なし、軍曹!」と報告する。軍曹は一人一人の前をゆっくり歩き点検する。それが終わると軍曹から小隊次席指揮官の上級軍曹へ小隊整列の報告がある。そして中尉がやってくる。小隊次席指揮官の上級軍曹が小隊へ「気を付け」の号令をかけて中尉へ小隊整列の報告を行なう。

それぞれの小隊が報告を終えると、週番軍曹の出番だ。真ん中に立って中隊全員に向かって「中隊、気を付け!」をかける。今度は中隊集合の報告を中隊付き曹長へ報告だ。休めがかかる。数秒後「中隊、気を付け!」の号令がかかり、中隊副官の大尉へ報告がある。それが終わるといよいよ中隊長だ。再度「中隊、気を付け!」の号令がかかり中隊長へ中隊集合の申告がある。中隊長が何か話す事がある場合はこの時みんなの前で話すし、何もない場合はすぐに「気を付け!」がかかり、「小隊は小隊長へ指揮権を下達する」で中隊集合は終わり、小隊長から小隊次席下士官へ、小隊次席下士官から日番軍曹へ、そして日番軍曹から日番伍長へ指揮権下達が行われる。その時小隊で特別な訓練などがある場合、軍曹から指示が出る。それ以外は伍長に引率されて中隊裏まで行く。そして訓練が始まる。

訓練は、フランス語の授業がある場合、週番当直室で教室の鍵を受け取らなければならないし、軍曹が授業の時は予め教材など準備していかなければならない。日番伍長は忙しいのだ。

大体11時40分か45分には終わる場合が多いので、全員に半長靴を磨かせる。外人部隊では基地にいる時以外でも常に半長靴は綺麗にしておかなくてはならないのだ。一通り全員が磨いたなと思ったら、ホイッスルを渡されているのでそれを1回吹き、「第2小隊中隊裏に集合!」と号令をかける。集まったら中隊広場に行き、週番軍曹の指揮下に入る。昼食だ。「中隊6列集合、伍長は左!」などと号令が出る。言われた通り集合して、隊列を整えたら「中隊歌!」と号令がかかる。一人が中隊歌の最初のフレーズを歌う。「中隊は食堂に向けて中隊歌に合わせて前進!」の号令が週番軍曹からかかる。新兵訓練なので中々上手く行かないもので、何度もやり直しになってやっと食堂に着く。食堂へ行く前に日番伍長達は週番当直室へ行って本日の小隊喫食人数を言って人数分の喫食カードをもらわなければならない。

食堂前に中隊が整列した。「伍長列外へ出ろ!左列から通常歩で食堂へ、それ以外は休め!」と週番軍曹の号令がかかり、皆駆け足で階段を登り食堂へ入る。が、すぐに入ることができない場合がある。他の中隊がいる場合だ。僕ら伍長連中はゆっくりした足取りで食堂にたどり着く。僕ら伍長連中は列の一番最初に並ぶ。食事を受け取って小隊が全員座る事が出来そうなスペースを見つけて席に着いて食べ始める。中隊の最後の兵士が席に着くあたりには僕ら伍長連中はすでに食べ終わる。見回して小隊全員いるのを確認、食べるのが早い兵士に合わせて「第2小隊、外に整列!」と号令をかける。僕は比較的時間をとって長くゆっくり食べさせるようにしたけれど、別の伍長などは最後の兵士が席に着いた途端「第何小隊、外に整列!」とかやっていたので、「新しいオイカワ伍長は親切だぞ!」と噂が広まった。

僕が新兵の時からなのだろう。残飯を捨てるゴミ箱はいつも満杯だった。今はゆっくり食べられるらしいけれど。

 

食事が終わるとタバコを吸う時間もないほどすぐに集合はかかる。「第2小隊、廊下へ集合!」の号令をだす。整列したら朝の時のように。掃除の割り振りの命令を出す。再び全てを見て回る。そろそろいいかなとなったら半長靴を磨かせる。よし!となったら「第2小隊、中隊裏に集合!」の号令を出す。集合したら中隊広場まで行く。特に何もなければ、直接日番軍曹の指揮下に入り訓練を始める時もあるし小隊長がいる場合もある。非常にランダムだ。

訓練中は特に伍長は必要ないので一服出来る時もある。自販機でコーヒーでも飲もうか???

夕方17時40分ごろには大体の訓練は終わる。再び全員に半長靴を磨かせる。「第2小隊、中隊裏に集合!」の号令をかけ、夕食のために集合する。食堂を出るまで昼と変わらず。そして「第2小隊、廊下へ集合!」の号令をかけるのだ。20時には中隊に掃除があるので、その時のために掃除の割り振りだ。その時全員にシャワーを浴びさせる。ちゃんと全員入ったかを確認する。武器掃除などがあると、シャワーは点呼が終わって消灯になってからだ。

「第2小隊、廊下へ集合!」を再びかける。夜の点呼だ。戦闘服の場合は再び全員に半長靴を磨かせる。運動着の場合は全員同じ位置までファスナーを上げさせる。など色々やる事がある。22時、週番軍曹が各小隊へ回ってくる。廊下に整列して「気を付け!」をかける。週番軍曹へ異常なしを報告する。軍曹は最後に「Bonne Nuit !」と言って立ち去るので「Bonne Nuit Sergent !」(おやすみなさい、軍曹!)と小隊全員で声を合わせて言うというのが暗黙の了解だった。

兵士たちは歯を磨いたり寝る準備に入る。だが日番伍長はまだ仕事がある。大きな表紙の「命令書」の右半分のページが開いている。その部分に士官、下士官、伍長、兵士と人数を、基本人数、事故何名、現在員、サービス何名、合計何名という表と内訳を書かなくてはならなかった。慣れるとそうでも無いけれどこれが厄介だった。物差しでボールペンなので失敗は許されなかった。それが終わって初めてシャワーを浴びる事が出来て初めて横になる事が出来るのであった。翌日の掃除当番も決めなければならず、いつも同じやつを掃除当番にするわけにはいかない。僕が自由時間になるのは下手をすると夜中の12時近かったのではないか???それで4時なり4時半起きである。日番伍長を1週間やると流石の僕でもぐったりきた。部屋には新兵がいるので、無闇に自分のベッドだからといって昼寝などしているわけにはいかなかったし、トイレなどもまともに行けなかった。これらの仕事は古株の伍長の仕事ぶりを見て覚えた仕事なので、もう少し上手く出来たかも知れない。だがもう過去の話だ。当時あの時はそれが最善だと思って一生懸命にやったのだ。

 

 

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