西アフリカ某国日記2-2

取り敢えず2週間が終わった。月曜日は教室の前でタバコを吸いながら生徒を待っていたけれど誰も来なかった。

この日は何もできなかった。シニアトレーナーのマーカスとボスのダヴィッド・ブルースが来て、現地軍にはインストラクターがいないので、君ら自身で授業をやって欲しいと突然言われたのはこの時だった。3年前にもこのExplosive Hazard Awareness Training(通称EHAT=爆発物の危険を教える。不発弾やIEDについて)の訓練はやった事があったのでその時のプログラムがHDDの中に入っていた。それを見て「どうにか出来るだろう」

と思ったので「何とか出来ますよ!」と返事をしておいた。当時は相棒「ルイジ」と一緒であったので比較的楽であった。本来ならば現地軍のインストラクターが授業をして僕らはアドバイスするぐらいしか仕事がなかった筈なのに・・・。プログラムをオランダ軍の軍曹ポールにメモリースティックにコピーしてあげた。もう一人はブルンジから来ていて、以前僕がいた東アフリカでの会社で仕事をした事があるらしかった。ただ軍隊経験はない。おまけにオランダ軍の軍曹は工兵だけれどもEODではないので地雷しか知らない。他の弾薬は僕が教えるしかない。ただ、オランダ軍の女性の少佐は自分の部下もしっかり講義を行なって現地の兵隊を訓練しているかと言う事に興味があるらしく、何かとマーカスに突っかかってくるらしかった・・・。報告書をオランダ本国へ送るためだ。しかしオランダ軍はアメリカと話をつけているだけで、実際アフリカで訓練している僕らにははっきり言っていても居なくても変わりがない。

 

今週はテロリストがどのようにして僕らを攻撃するのか、どのような手段を用いてくるのか???などの講義とともにIEDについて話した。それから、彼が作戦に行く国でどのような不発弾に出会うのかを教えた。対人地雷、対戦車地雷、砲弾、迫撃砲弾、手榴弾、ロケット、一部のミサイル、クラスター・爆弾。またそれらの識別方法など、生徒の兵士たちは初めて見る物ばかりであった。それらをスライドやホワイト・ボードを使って教える。人数は12、13人と少ないけれど、彼らは中隊の中では一応「EOD下士官」と言う役職なので真面目に聞いている。たまに1人か2人、まぶたが重くなって来る連中はいるけれど、そんな時は「KAWA先生」が黙って睨み付ける。そうすると本人は「KAWA先生」の声が急に静かになって慌てて目を覚ますと言う次第。「お前、今楽園に行っていただろう???」と言うと周りから笑いが起こる。彼らは正直に今楽園へ行っていました!と言うのだ。それでさらに笑いが起きる。そんな事が何回か続くと授業にならないので休憩を入れる。「俺の腕時計では今X時X分だから、休憩はX時X分まで休憩!」。僕も水のボトルから水を飲み、徐にタバコを吸う。そんな具合で今週は終わった。教室内は日陰だし30数度でそこまで暑くはないけれど、来週からはエクササイズが入ってくるので、外での訓練が始まる。40度を超える暑さだ。ここでは僕は「KAWAが太陽の下にいるから全員太陽の下へ出ろ!」とか、「今KAWAは日陰にいる。だから全員日陰に入れ!」と言って訓練する。暑いのは僕も一緒だ。みんなと同じ様にすれば話を聞いてくれる。彼らは戦闘服を着て日向で訓練しているのに僕だけ涼しい所にいる訳には行かない。僕だって日向は暑くて長居はしたくないけれど、その分、夜に旨いビールが飲めると言う物だ!幸い土曜日と日曜日は休日なのが助かっている。お陰で来週からまた頑張る事ができると言う物だ。

 

土曜日は報告書が待っている。朝はいつも通り5時半に起きて、朝食は6時半、報告書は英語だ。何とか10時過ぎにフランス語で書き終えて英語に翻訳してボスにメールで送った。取り敢えず週末はこんな感じで過ごしている。

ホテルの部屋は禁煙なので、いちいち1階までエレベーターで降りないとタバコは吸えない。ただ慣れると特に不便には思わない。

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