B 279 ある日の行軍

ある日、中隊で行軍が予定された。新しい中隊長のダラス大尉は、まだ着任したばかりなので、何か中隊に爪痕を残そうという姿がありありと見えたので、予定外の行軍に、みんなうんざりしていた。おまけに夜間行軍だ。その頃の僕はすでに何度も行軍の経験があり、別に苦では無かったが、予定外の行軍にうんざりしていた一人だった。おまけに次席指揮官のラオス人のケオパニャと一緒だという。ケオパニャのランドナビゲーションのレベルが心配だった。

地図を見ると、距離的には20と数キロぐらいか???地図通り行けば、明け方あたりには目的地に着く予定であった。暗くなり、出発した。ケオパニャが地図を片手に歩き出した。僕のグループは僕の後ろを歩き出す。僕も同じ地図を手にしていた。たった数キロ歩いただけで、地図の道と違う道を歩いているのに気が付いた。僕はケオパニャのところに行き、「今の位置は???」と聞いてみた。そうしたら、迷ったようで、全く違う方へ行こうとしている。「俺のグループは、ここからは別行動をとるよ!」と言って、グループを率いて別の方角へ歩き出した。今いる間違ったポジションからちょっと行ったところから枝分かれしている道を右に行けば元のコースに戻れる。それからは調子が元に戻った。必ず通過しなければならない場所が2箇所あったけれど、難なくそれらを通過した。そうこうしている内に、小隊長のトレス曹長のグループに出会ったりした。トレス曹長は、ケオパニャのランドナヴィゲーションのレベルを第2中隊にいた頃から知っており、ことの顛末を僕から聞いた小隊長のトレス曹長は、不思議そうな顔をせず「オイカワ、お前はお前の道を行け!」と言ってくれた。

僕のグループには、結構な数の喫煙者がいたけれど、休憩の時の火の付け方やすい方には気をつけるように教えた。まず、1本目に火をつける。その時は、戦闘服に隠して火をつける。その1本目を火種に使って、2本目、3本目とつけてゆくのだ。裸火は、かなりの長距離でも夜間は目立つので、全員に徹底させた。吸い殻も、その辺へ捨てないように言った。ポケットに入れておけと言った。「行軍が終わったら俺が確認する!」と喫煙者全員に言った。もちろん僕もだ。僕の右ポケットがそのおかげで常にタバコの葉っぱカスがウロウロしていたけど。

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