B278 軍歌 

トレス曹長の小隊になって、なんだかのんびりしていた。と言ってもやることには変わりは無く、新兵達に僕の知っていることは全て伝えたつもりだ。でもフランス語を理解出来ている連中が少なくて全て理解できているかどうか・・・。伍長達と違い僕ら下士官はフランス外人部隊兵として必要な技術的なことを指導する事が多かった。

日々のやることは伍長達の仕事なのだ。掃除洗濯、集合、飯の支度など、外人部隊の生活に関わること全てだ。ただ、軍歌は僕が担当した。僕ほど外人部隊の軍歌を知っている奴がいなかったし、歌によってはハモる部分があるので、それも指導した。外人部隊では軍歌は常に歌われる。集合場所への移動の時や、食事で食堂へ向かう時、何かで集まった時など、歌う場面はしょっ中あった。それは先輩の外人部隊兵が隊列を組んで歌い出すのを見た事がある人なら圧倒されるはずだ。それは僕が新兵の頃見た先輩の外人部隊兵を見た時、一言「スゲ〜!」と思った時と同じだ。月曜日の連隊朝礼のために各中隊ごとに集まる姿は感動ものであった。僕は新兵達にそれを早く見せたかった。昔はドイツ人が多かったので、ドイツ語の歌詞の歌もあったけれど、それも教えた。それらは旧ドイツ軍の古い歌とかもあって、歌詞は外人部隊に合わせているのでフランス語の歌もあった。僕は日本人なのにフランス語、はたまたドイツ語までも駆使しなくてはならなかった。普段でも使い道のあるドイツ語などはすぐ覚えた。だけど、英語などは1ミリも使わなかった。

外人部隊には軍歌集というものがあり、僕が新兵の頃は黒板にスライドを写してそれを書き写すという作業がほぼ毎日あって大変だったのを思い出した。だが今は一人1冊の軍歌集をもらいそれを見ながら歌を覚えるという風に、随分と楽になったなぁ・・・と思ったものだ。たった3年余りの間に、外人部隊も変わったものだ・・・。それに、僕は2月に新兵訓練だったが、そのクソ寒い2月だというのに防寒着である「パーカ」などは着る事が許されなかったけれど、今はちょっとでも寒いとなると「全員パーカを着ろ!」と命令が飛ぶ。まぁ、外人部隊もそれだけ楽になってきているのだろう・・・。

読んでくれた人、ありがとう。

コメントを残す