万年雪があった。そこは野営地の側だった。僕は背嚢に入っていた50リッターのゴミ袋を出して万年雪の斜面を駆け上り、そのゴミ袋を尻の下に敷きそりの如くその斜面を滑って降りた。万年雪の中、小隊は「ケピブラン授与式」を行った。これで新兵たちは正式な「外人部隊兵」となったのだ。
今日は下り道が多かった。それに、歩いていると、その道の側は川が流れていた。全員の水筒を確認して、「水を汲め!」と命令を出した。もちろん僕もだ。殆ど全員、水筒の水の残りはあまりなかった。その辺は新兵だった。水の配分が分からなかったようで、殆ど無いものも何人かいた。携帯食糧に入っている消毒用の錠剤を使うように指示を出して、僕もそうして、タバコに火をつけた。また黒い等高線になっているところを歩いたが今度は下り道だ。しかしすごい下り道で、落石に気をつけるように命令を出す。それと同時に落石を出さないようにも指示を出す。下の方に白い1列縦隊が見える。先輩小隊の連中のケピ・ブランだ。ほぼ真下に見える。僕らが履いているのは軍の半長靴なので、滑らないように気をつけるように指示を出す。
なんとか楽に歩く事が出来るところまで降りた。あとは村があってそこから執着地点のパーキングまで少しの登り道があるだけだ。村はものすごい観光客であった・・・。お土産物のお店がたくさんあった。この辺はヨーロッパ各地から観光客が来るようであった。車も、スペインナンバーだけではなくて、ベルギーナンバーもあった・・・。僕らは「なんだ、こいつら???」みたいに変な目で見られた。
あと数キロでこの行軍もおしまいだ。僕はあまり疲れてはいなかった。何しろ地図を持っている。新兵たちは、自分たちが何処にいて何処へ向かっているかは知らないし、あとどれくらい歩かなければいけないのかは知らない・・・。村に入って、あとひと登りというところにきた。新兵のトルコ人のタランが目に涙を浮かべている。「タラン!何泣いているんだ???」とはっぱをかけた。彼は「また登り道だ!」と絶望したらしかった・・・。タランがおかしかった。これぐらいで絶望するようなら、これから5年間の外人部隊の生活は思いやられるはずだ・・・。外人部隊の生活は理不尽のオンパレードだからだ。
読んでくれたひと、ありがとう
前列の黒いケピがシェフ・アンドレス、僕は向かって右端。真ん中の「岩」の裂け目を越えるとスペインだ。