B 267 背嚢を背負え!

「スペイン橋」に到着した。近くに原っぱらしきところがあった。牛のフンだらけであった。なんとかフンのないところを見つけて分隊に寝る場所を指示して僕も寝る準備をした。行軍は明日の朝からだ。レーション(携帯食料)の晩飯を食べる。酒もないので、タバコを吸うしかやる事がなかった・・・。

翌朝6時過ぎぐらいに起きて大事な水筒の水を沸かしてコーヒーを作った・・・。いよいよ行軍出発だ。他の小隊が先に歩いていた。彼らは僕らの小隊より古株なので、頭にすでに白いケピを被っていたので、一眼でどこを歩いているかわかった。すごい登り道だ!分隊の新兵たちはそれを見上げて驚いていた。こんなのぼり道、軍曹の僕だってほとんど経験がないぐらいの登り道であった・・・。僕は分隊長なので、FA -MAS(小銃)の他にPP 11という携帯無線機も持っていた。これが邪魔者で、重さは軽いんだけれど、かといってものすごく軽いわけではなく、微妙な重さがあった・・・。仕方なく地図を片手に歩き出す。とにかく登りばかりであった・・・。僕は第3分隊なので、小隊の一番最後であった・・・。

この日は登りだけであった・・・。シェフ・アンドレスが休憩場所を決めるのだが、決めると言っても上まで1本道、たかがしれていた。驚いた事にここはハイキングのコースになっていて、民間人もたくさん歩いていた。僕らとの違いは、靴は自分の足に合っているトレッキング・シューズで、荷物が軽いというところか???僕の半長靴は僕の足に合っているけれど、新兵たちが心配であった・・・。果たして大丈夫か???休憩の時、背嚢を下ろしてタバコに火をつける。そして新兵たちをみて回る。「ça va? tes pieds?(足は大丈夫か?)」と新兵たちに聞いてまわる。特に不具合はなさそうであった。でも僕らが今休憩しているところは、まだ黒い等高線まで来ていない・・・。ハンガリー人の見習い伍長のプビャーレが全員の持ち物などを確認している。OKの返事が来る。僕はこの時ようやく水筒の水を1口飲む。2本目のタバコに火をつける。分隊の新兵たちはまだ元気そうであった。

タバコを吸い終わり、全員に「sac à dos!」(背嚢を背負え!)と号令をかける。隊列が整ったところで再び登り道を進み始めた。吸い殻はポケットにしまう。これは全員に徹底させた。ゴミを出さないようにだ。行軍終わりに全員のポケットを見せろと検査するためにやった事だった。僕のポケットも同様だった。

 

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