B 264 事件

    ある日の朝、今朝の駆け足は、小隊みんなで走ることになった。シェフ・アンドレスが先頭で他が続いた。僕は下士官なので、どこを走っても良く、駆け足があまり好きではないシュミット軍曹の近くを走っていたが、この日の膝の調子はあまり良くなかったのを覚えている・・・。
    何キロぐらい走っただろうか???膝が痛みはじ寝たので、シュミット軍曹に「先に農場(訓練場)に帰っているよ!」と伝えて、途中から農場へ引き返した。農場へ着くと、中隊の中尉から電話が来た。「誰か死んだらしいが誰が死んだ???どうなっているのか???」という話だった。僕も訳がわからず、「膝が痛いので僕だけ先に帰って来た。」と伝えたけれど、なんか話が噛み合わない。別の中尉からまた電話が来た。同じ内容で「何があった???」「誰が死んだ???」と、さっきの中尉と同じことを聞く。僕は何が何だかわからない旨を説明したけれど、全く変な電話であった。
    小隊が戻ってくるまで、1時間ほどあっただろうか???シェフ・デュミは朝早くから連隊に連絡のためで払っていていなかったし、今は僕一人しかいない・・・。この時小隊で一人の新兵が呼吸器の問題で駆け足の最中に急にぶっ倒れてそのまま死んでしまったのだ・・・。戻ってきた小隊は、全員少なからず動揺していた感じがした。での一番動揺していたのは、小隊長のシェフ・アンドレスだった・・・。何があったのか聞くのも憚られる感じがしたけれど、「何があったのですか、シェフ???」と一応聞いてみた。その返事は「いきなり一人の新兵が倒れて、気がついた時には死んでいた!」というではないか・・・。トルコ人のチムラン軍曹が救命措置をとったけれど、もうその新兵は呼吸しておらず、どうにももならなかっったらしい。それで近くの家から救急車を呼んだり、連隊に電話したり忙しかったらしい・・・。シュミット軍曹に聞いても「手の施しようがなかった!」と言うのみであった。シェフ・デュミもそのうち帰ってきて、話を聞いて驚いていた。後で病院からの話を総合すると、この新兵、数千人に一人という呼吸器疾患で死んだということで、今回は運が無かったという事らしかった。その間意気消沈していたのはシェフ・アンドレスだった。彼は今年の上級軍曹から曹長への昇進リストに載っていたけれど、預かった新兵の一人が事故とはいえ死んでしまったので、もう昇進できないと思っていたのだ・・・。シェフ・デュミも、連絡とはいえ、連隊へ行っていなかったので、注意を受けた。1台しか無かった車両を連絡のためと言え使ったからというのだ。たとえ車両があっても何も役に立たなかったのに・・・。とにかく大事件であった。その後、新兵を集めて、シェフ・アンドレスから今回の事件についてみんなへ説明をした。それが終わると、いつも通りの訓練が始まった。3つのグループに分かれて3人の軍曹は訓練を始めた。僕はというと、その事件を見ていなかったし、「そういうこともあるんだなぁ」ぐらいしか特別何かを感じたわけでもないので、普通に授業を開始したのを覚えている・・・。

                     読んでくれた人、ありがとう

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