B 261 やれば出来る外人部隊

    伍長たちとシェフ(上級軍曹)デュミが新兵たちを使って農場(訓練所=フェルム=Ferme)へ向かう準備が整い始めた。僕ら軍曹たちも個人の荷物を作らないといけない。僕は背嚢の他は90リットルの金属製のカンティーン・ボックス(行李)に色々な装備品や小物を詰めたものだけだった。シュミット軍曹に「それだけか???」と言われたけれど、まだ初めてだし、何が必要かはこれからわかって来るだろう。最低限は詰めたつもりであったし、多分大丈夫であろう・・・。
    そして農場へ出発の日が来た。荷物はトラックに積んで、僕達小隊は、武器庫へ行き武器類を取り出しにいった。それが終わると、全員が連隊のバスへ乗り込んだ。「昔はトラックで移動したものだ!」などと感慨に耽っていると、見たことがある田舎道が見えてきた。僕が新兵訓練をやったのはほんの4年とちょっと前なので、まだ記憶は薄れていなかったのを覚えている・・・。

    そしてバスは農場(訓練所)に着いた。僕には、管理棟の2階の一室があてがわれた。僕はもう軍曹なのでここでもほとんどやる事がなかった。部屋はベッドと机、椅子があるだけだった。荷物を運んできた新兵たちに「ここへ置け!」と指示を出すぐらいであった。荷物を簡単に解くと、一階に降りて、シュミット軍曹と農場がどう変わったか見せてもらった。まず最初に教室だ。黒板はなくなり、ホワイトボードになっていた。椅子と机が揃っている。そして隣の洗面所を見せてもらって驚いた。ちゃんと鏡があってお湯が出るというではないか!白い普通の洗面所が4、5つ、その奥まった部分は5、6人が一気に浴びることが出来るぐらい広いシャワールームがあった。なんと、僕が新兵の頃は、冬、暗がりの中、表の寒空の下、鏡なんてなく、凍りそうな水で髭を剃ったものだったから、随分進歩したわけだ!次に兵士たちの居室を見て回った。当時は壁に大きな穴が開いていて、歩く隙間がないくらい携帯ベッドを敷き詰めたあの大きな部屋は無くなっていて、3つの部屋に、マットレス付きのあの70センチ幅の2段ベッドが置いてあるではないか!3分隊あるので、各分隊ごとに部屋分けされるという事か???

    管理棟の僕らが食事を取ったりするところはでかいサロンになっていてその脇はキッチンだった。キッチンにはハムを細かく薄切りにする機械だったり、お湯を何十リットルもすぐに沸かせる機械だったり、ステーキを焼く機械など、当時切れないナイフでじゃがいもの皮を剥いていた僕としてはこの近代的な機械類の囲まれたキッチンは信じられなかった。カフェなんかで使うようなでかい冷蔵庫もあった。

やれば出来るではないか!!!外人部隊!!!本当にそう思った瞬間であった。「マジかよ!」の連続であった。

                  読んでくれた人、ありがとう