アフリカ中西部日記 11

今週は金曜日から今までの訓練の評価演習が始まる。火曜までこのどうしようもない「第一中隊」の最後の訓練をしなければならなかった。規律がなっていないのはほとんどのアフリカ連合(AU)の軍隊なら仕方がない事であったけれど、規律が厳しい「フランス外人部隊」にいた僕にとっては怒らない様にするのが大変であった。まぁ、初めての事では無いにしてもこの国の軍隊はしょうもなかった。僕らは4時過ぎに起きて朝食をとり2時間以上もかけてこの訓練キャンプに来ているのだ!それにも関わらず教室に来ているのは僕だけで、授業開始まで1時間以上待たされるのはしょっ中だった。僕は8時前には教室に行くのだけれど、兵士は9時ごろ集まってくるのが普通だった。これに関してはもう諦めた。すでに2、3回この国に来ているダヴィッドも「この大隊が今までの中で一番酷い!」と言っていた。なので気にするのは止めた。

 

第1中隊の訓練の参加者はまず「士官」たちを見たことがなかった。数人の下士官と兵士たちで訓練を開始した。下士官兵達はそんな士官たちの姿勢を毎日見ているので、いようがいまいが気にしていない様であった。こんなので紛争地へ展開して大丈夫か?と心配になった。

3日目の訓練になって初めて中隊長と2人の中尉がやって来た。前日、大隊副官の少佐へジェフが話をしたらしかったのでやって来たらしかった。今朝初めて中隊長に会った。一人の中尉に「ここに来て何をしているのか?」と聞いたら「オブザベーション」とぬかしやがったので「それは俺の仕事だ!お前の仕事は自分たちの部下を指揮する事だ!」と言ってやった。中尉で指揮の仕方を知らないくせに、何がオブザベーションだよ。兵士の前で指揮の仕方を知らなくて笑われるのはお前だ!おまけに紛争地へ行ってお前のせいで兵士が戦死したり怪我したらどうすんだよ!と言ったら黙った。

その中尉は不服そうな顔をしていたけれど、部下の兵士が死んだり怪我をしたりしてお前、兵士達の家族に説明出来るのか???数分後に大隊副官の少佐が見に来て僕のところに挨拶に来たのでさっきの中尉との会話について少佐に話した。少佐は怒って「〜大尉!」と中隊長を呼びつけた。僕は訓練の最中だったのでその場を離れたけれど、この件で少佐にかなり怒られたらしい。当然だ!

 

木曜日は管理支援中隊への、今までやった事の復習をした。ここの中隊は、憲兵隊など色々な連中が混じった中隊だった。しかし規律をよく守り統制が取れていて、僕らの同僚の中でも評判が良かった。ただ、中隊長は、先発隊として1週間ぐらい前に大隊長とすでに紛争地へ向けて出発していて、代理は一人の若い中尉だけだった。にも関わらず、下士官達がしっかりしているので問題は無さそうだった。明日からの評価の演習の最初はこの管理支援中隊から始まるので、かなりの質問を受けた。今まで覚えた事に関して疑問や確実を期すための質問ばかりだった。ここの中隊は「装甲車の運転訓練」にも多数が参加していて顔馴染みであった。上は上級曹長から一般兵士までほぼ全員僕の事を知っていた。なので「KAWA」にさえ聞けば全て教えてくれるはずだ!とみんなが思っているらしく(そんな事あるわけない!)とにかくいろんな質問を受けた。

出来る限りを答えて、明日の準備のために司令部の建物へ向かった。11時30分から、明日からの評価の演習のための説明会が少佐以下中隊長、その代理の中尉たちが集まって行われるからだ。その時に、第1中隊の士官がいないのに気づいた。どの同僚に聞いても「第1中隊」の評価が悪かった。説明会が終わってジェフに聞いたところでは中隊長以下士官達を交代させると言う事で、とりあえず明日からの評価演習には参加しない。その代わりの何かしらの任務を与えられるらしいと聞かされた。それはそうだろう。士官が一人も訓練に参加していない。そんな事で実際に兵士たちを指揮出来る筈など無く、当然の処置だろう。副大隊長が決めた事らしかった。そんな中隊で紛争地に行かせたら兵士たちが可哀想だ。

説明会で明日の命令書が各中隊に渡された。司令部の大尉が説明する。各中隊はその命令書通り中隊を指揮して任務を遂行するのだ。そのために僕らは説明が終わった後、中隊長を捕まえて質問するのだ。果たして命令を理解したのか?そのための準備はどの様に行うのか?各小隊の役割は?などなど。

管理支援中隊の中隊長代理の中尉を捕まえて色々と質問した。命令内容は理解しているようだ。ただ、中尉しかいないので、大変だろうことはわかった。「いずれ大尉になって中隊を指揮する時のための訓練だよ!」「部下を信用しろ。大丈夫、明日はうまく行く筈だよ!」と声をかけて緊張しない様に言った。明日彼の中隊は、僕が責任者の「陣地防御」の所から始まる・・・。

 

帰りの装甲車の中で事件は起きた!帰りの装甲車は、後部扉からすぐ、右側がジェフ、左側がダヴィッド、ジェフの右は僕だった。僕は装甲車の騒音が酷いので、いつも「ウォークマン」をつけて音楽を聴く様にしていた。走り出して30分もするとウトウトし出して寝てしまう・・・。その時だった。ジェフの肘がぶつかり目を覚ますと、ジェフの前のダヴィッドが笑い転げている。ジェフは装甲車が走り出すと、自分のスマートフォンで、何か映画かテレビの録画したドラマかを見ていた。僕は気にせず音楽を聴きながら目を閉じていた。そんな中、ジェフも寝入ってしまい自分のスマートフォンを滑らせてしまって装甲車の床に落とした様で、慌ててハーネスを外して足元をゴソゴソやっている最中であった。今は民間人とはいえ元大佐のジェフは、そんなところを部下のダヴィッドやKAWAに見られてしまってひたすら苦笑いであった・・・。

憲兵隊の検問所に到着した。迎えの車が来ていない。これで2日連続であった。装甲車の後ろにいたジェフに「スマートフォン壊れなかったですか???」と聞いたら、傍にいたダヴィッドと僕を見てまた苦笑いを浮かべていたのであった・・・。

 

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