B 208 握手

1990年1月21日(月)

午前10時すぎにダンジュー駐屯地へ着き新兵訓練第2中隊への配属が決まった。幸いな事に新兵訓練を一緒にやり伍長訓練でも一緒だったティモンも同じく第2中隊へ配属になった。しかしとても気が重い・・・。なぜなら僕だけが第2小隊で、ティモンともう一人は第4小隊、僕は一人ぼっちになってしまった・・・。

小隊長は下士官から士官になったシャサリオ中尉、次席指揮官はイルドリム上級軍曹、分隊長の軍曹たちは、元第2外人歩兵連隊から出向いて来ているフランス人のモンパ軍曹、元第2外人落下傘連隊出身でイギリス人のアレン軍曹、元第2外人落下傘連隊出身でフランス人のルドレッフ軍曹であった。同僚になる伍長は第2外人落下傘連隊から来ていて軍曹訓練へ行く予定になっているリコ、第2外人歩兵連隊出身でドイツ人のヴェルブロックなどであった。僕はまだ伍長の階級章はないので制服用の伍長の階級章の付いた腕章をはめるよう渡された。これは新兵訓練を終わったばかりで見習い伍長になる連中が付けるやつで、最初のうちはみんなに見習い伍長と間違われた。書類上正式な伍長昇進はもう少し先の事だ。

 

1990年1月22日(火)

一日中連隊中の色々な事務室をまわり色々な書類にサインをもらった。

 

1990年1月23日(水)

まだ日番伍長ではないので少しは楽だが、午前中の射撃の時、新兵たちにFA–MASの分解・組み立ての授業をした。何しろ初めてフランス語でやる授業だったのでなかなか大変であった・・・。夕方は駆け足、夜は酒保で少し買い物をする。

 

1990年1月24日(木)

2日間の予定で演習出発。場所はカルカッソンの北、ヴィルモリーと言う演習場だ。主に射撃のためらしい。ここにはすでに来た事があった。伍長訓練の時だ。昼食後、コマンド訓練のコースのような障害物コースがあり、新兵達と回るのだ。もっとも僕の仕事は各障害物を滞りなく新兵達をパスさせるだけだったけれど・・・。

夕方は、伍長訓練の時に野営した事があった場所へ行って野営の準備をした。まだ同僚の伍長達とは仲間意識を共有していないので僕は一人だった。以前より寒い・・・。ただ、伍長は明らかに新兵達と違った立場なので、朝になると軍曹達と握手をするようになる。僕は最初、握手するために軍曹から手を出された時に面を食らってしまった。連隊では古株のせいぜい上級伍長ぐらいにならないと下士官とは握手などはしないからだった。敬礼のみである。なので理解するまで少し時間がかかった・・・。おまけに新兵訓練なので中尉とも握手をする。これにはびっくりした。

 

1990年1月25日(金)

午前中はFA–MASの射撃、午後は89ミリ対戦車砲の射撃と爆薬の訓練、伍長ともなるとほとんどやる事もなく軍曹達といろいろ話をしたりして時間を潰した。

夕方ダンジュー駐屯地へ戻り今度は武器手入れの監督を任された。今までの武器手入れは監督される立場だったのだけれど、今度は監督する立場だ。今まで伍長達の仕事ぶりは見ていて知ってはいたけれど、見るのとやるのは違う話だ。こうやって伍長の仕事を覚えて行った。

 

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