アフリカ中西部日記 9

今週は射撃で、大隊全部の中隊が毎日交代で射撃する事になっていた。ダヴィッドは朝から調子が悪そうだったけれど、訓練キャンプに着いてから、その日射撃する中隊とルイジと一緒に射撃場へ出発した。僕は第2中隊に射撃についての授業を行った。翌朝5時に朝食に行こうとして部屋を出ると、ダヴィッドの部屋の電気がついていない。まぁ、まだ早いからな。と思っていた。食堂についていつもの様にベーコンやオムレツ、フランスパン2切れを取って席についた。この時間は僕の後からシェリフとクリスティーがほぼ同じ時間にやってくる。最近はボスのジェフも早い時間に来る様になった。僕がベーコンと、切り分けたオムレツをパンに挟んでいると、ジェフがやってきて直接僕のテーブルのところに来た。「KAWA、ダヴィッドが熱があって動けないからダヴィッドの代わりに射撃統制官をやってくれないか???」と言って来た。僕は「大丈夫。やりますよ!」と答えた。ルイジが食堂に入って来ていつもの様に僕の向かい側へ座った。「ダヴィッド、昨日の夜は39度の熱だったよ・・・。」と教えてくれた。そりゃ動けないはずだ!それから昨日の射撃について詳しく教えてもらった。「1射列1時間20分かかったよ。連中をテキパキ動かさないと時間がかかるぞ!1個中隊5射列はあるからな!」と言った。昨日キャンプの事務所の帰って来たのは16時を過ぎていた。それからホテルへ向かって、着いたのは18時を過ぎていた・・・。引き受けてしまった以上やるしかない。射撃訓練専属で2人の中尉がいて昨日の射撃を見ているから今日はうまく行くはずだ!とジェフは言っていたけれど、どこかでもっと時間を削る事ができる筈だと僕は思っていたので、まずは射撃場へ行ってからだ・・・。

射撃する中隊は第2中隊だった。昨日射撃の授業をしたばかりで、下士官たちはなかなかしっかりしていた。中でも一人の背の高い上級軍曹は飛び抜けて頭の回転も早く、いちいち細かく説明する必要はなかった。「明日は射撃だから、午後は銃の掃除をしっかりやって、銃身内をキレイにして作動確認、弾倉の準備・・・」などを僕の前で繰り返した。彼がいるおかげで射撃訓練はスムーズに行くだろうと思った。

ダヴヴィッドが最初プログラムしたのは、25メートル3発で弾痕確認を3回、その後100メートルで伏せ撃ち、膝撃ち、立ち撃ちを10発ずつ、再び25メートルに戻って左右正面に合図に合わせての2連発を5回ずつ計30発というものだった。それが終わって初めて次の射列と交代する。1時間20分かかる筈だ。最初の射列はすでに射撃を開始していた。僕は2人の中尉と話をした。「とにかく全員25メートルで撃たせて、全ての射列が終わったら全員で100メートルに移動というのはどうだ???」と提案してみた。一人の中尉は「昨日ダヴィッドに言ってみたけれどダメだった。」という事だった。「俺はダヴィッドではない!KAWAだ。どうする???」と再び聞くと、「それで行きましょう!」という事になった。

第2射列から僕が提案した様に射撃の順序を変えたおかげで、その他の射列も素早く交代して13時ちょっと過ぎには全ての射撃が終わった。手違いがあって出発に手間取ったけれど、上手く進んだ!

 

14時ごろキャンプに戻った。事務所に入るとジェフが驚いて言った。「KAWA、ここで何をしているんだ???」僕は吹き出しそうになりながら「今日の射撃訓練が終わったので戻って来たんですよ!そんな事よりみんな、ホテルへ戻る準備が出来ていないじゃないですか!」と言った。ジェフはまだ驚いて目を丸くしている。事務所にいたマイクやクリスティーはただただ驚いている。僕は自分のバックパックを置いてトイレに向かった。用を足して手を洗っていると、今度はシェリフがトイレに入って来て「KAWA、何やっているんだ???」というではないか!僕は「ホテルに戻る準備が出来ていないぞ!」と言ったところで2人で大笑いした。

ホテルに戻ってダヴィッドの様子を見たけれど、まだイマイチだった。ほんの少し話をしただけで彼は再びベッドに横になった・・・。僕は部屋に戻ってシャワーを浴びてルイジの部屋へ行った。今日の射撃について説明した。25メートルで一通り終わってから100メートルに移動した方が全然早い旨説明した。明日はルイジがダヴィッドの代わりに射撃場へ行くからだ。それ以降、8時にはキャンプを出て6キロ離れた射撃場へ行き、僕がやった様に射撃の順序を変えたので、12時過ぎには終わる様になった。なのでホテルに着く時間も以前通りか少し早くなっていい事尽くめだった。

ダヴィッドもマラリアと言う事だった。ただ彼はすでにマラリアにかかった事があるので、それのぶり返しだった。解熱剤とマラリア用の薬で木曜日にはなんとか元気???になって再び射撃統制官をやっていた・・・。

 

僕の方はと言うと、第2中隊に「パトロール」について授業をしていた。教える内容は対して難しくないのだが、「歩兵」に関する事なので、最後にその手の「歩兵」授業や訓練をしたのはもう25年以上も前に軍曹訓練コースや小隊長基礎訓練コースでやったきりだったので、思い出すのに少し苦労した。ただ、外人部隊では工兵連隊だったにも拘らず、給料明細の兵科の所には「Génie(工兵)」ではなく「INF/LE(歩兵/外人部隊)」と書いてある。まず何よりも外人部隊兵士は歩兵であるべし!と言う事なのであった・・・。

教室での授業の後は、実際に訓練キャンプの地図を渡してパトロールの道順、目標物の位置、各小隊の位置などを説明した。僕は中隊長役になって各小隊に命令を出す。小隊長はそれぞれの分隊長に命令を出すのだ。そして分隊長はそれぞれの班長に命令を出す。彼らはすでに知っている事なので、なかなか悪くはなかった。ただ、無線機がなかったので、大声で命令を出したり、パトロールの距離が、膝が悪い僕に取っては大変であった。ただそんな事は生徒には関係のない事なので、彼らについていくのは大変であったけれど、なんとか最初のパトロールの訓練は終わった。時間があったし、もう少し改善できる点があったので、2度目のエクササイズを行った。同じパトロールのコースだ。KAWA、がんばれ!

なんとか2度目のパトロールの訓練が終わった。全体に講評した後、小隊長役をやった上級軍曹達を集めて小隊ごとに良かった点、悪かった点など話をした。

翌日は3箇所の村のチェックだったので、各小隊に割り当てた。昨日より大きなパトロールのコースだったので、どうなるかと思ったけれど、上級軍曹たちも、昨日の訓練でコツを掴んだのか、前回のパトロールより指揮の仕方も上手かったし分隊の動かし方も良かった。なのでパトロールは一度で済んだ。分隊長も昨日に比べて慣れた様だったし、統制が取れていた。

 

今日から第1中隊に同じ授業をする。一番ガッカリしたのは授業に参加しなければならない下士官が4人しか来ていない事だった。「他の下士官達はどこにいるんだ???」と聞いたけれど、要領の得ない返事ばかりだ・・・。仕方がないので中隊編成は諦めて、やっと7人に増えた下士官達を小隊編成に切り替えてやる事にした。月曜と火曜はこの「第1中隊」と訓練を行うのだがどうなることか???

 

金曜日は12時に訓練を終わる事になっていた。射撃の連中も12時前には戻って来た。さて、ホテルへ戻ろうか!と言う事で装甲車に乗り込んだ。そうこうしている内に空が曇って来て瞬く間に黒い雲だけになり、まるでプールをひっくり返した様な大雨が降って来た。慌てて装甲車の扉を閉める。けれど、それだけでは済まなかった。上部のハッチのジョイントのゴムがちゃんとしていないので、そこから雨水が落ちてくるのだ。後部扉からジェフ、僕と座っていたのだけれど、後部機関銃座のハッチの所から水がジェフめがけて落ちて来た。僕は「雨季」と言う事は知っていたので、バックパックの中にはいつも雨衣の上下を装備しているのだけれど、ズボンがびしょ濡れになったジェフを見て雨衣の上着を出して使う様に言って渡した。いい加減濡れてしまったけれど、かけるだけでも違う。最初は遠慮していたジェフだが、2度目に水が落ちで来たのを見て躊躇なく膝のところにかけた。

雨のおかげで気温が下がって、いつもならありがたいと思うエアコンが急に寒くなったので、しまいには前部側に座っていたトニーが運転手に「エアコンを切れ!」と言って切らせた。僕も寒さを感じていたのでありがたかった。憲兵隊の検問所に着く頃には青空が広がっていたけれど、アフリカに規定さびさに寒い目にあった日であった・・・。

 

金曜日で、早くホテルについて時間があったけれど、ビールを飲むには早すぎると思って18時まで我慢した。昔なら決して躊躇などしなかったのだけれど・・・(笑)

 

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