アフリカ中西部日記 10

今週から「陣地防御」について教える事になった。陣地防御には、なにも敵の攻撃のことだけではない。教えている兵士達は国連の平和維持部隊として紛争のある国へ出かけるので、それに反対する住民達への対応も含まれる。紛争のある国の人達はまず食料の不足に悩んでいる。いくら国連がいると言っても、例えば「小麦粉」の入った袋が末端の住民に届くという保証はない。国連はアイデアや意見、予算は出すけれど、実行機関では無い。なので下請けに出す。民間の企業が沢山国連のために参加しているのはそういうわけだ。僕は以前に東アフリカで民間の会社で働いていた事がある。軍事関係の方だけれど。平和維持軍への訓練とアドバイス、監督が主な仕事であった。さも無いと兵士たちがボコボコ簡単に死んでしまうからだ。

「小麦粉」の話に戻ると、国連は金は出すけれど、それらの買い付け、輸送、配布は下請けに出す。チェックはしない。なので港では山と積まれた食料が朽ち果てているのだ。下請けもたくさんの企業が中間に入っているので、「荷物は言われた通りにどこそこの港まで運びましたよ!」となり、契約には違反していない。次の企業が「港からの移動は契約に入っていない!」と言うと、積まれた食料などはどんどん朽ち果ててしまって廃棄するしかなくなるのだ。そう言う無駄が世界中の紛争地などで実際にあるのだ!そこにかなりの資金を出している「日本」は考えた方がいい。

食料のほかに「医療」不足がある。薬が足りない、医者がいないので治療出来ないなど不満は多い。そう言う不満は時に平和維持軍の基地まで押し寄せるのだ。そう言う人々はデモを起こして平和維持軍のところに来て文句を言う。そう言うデモの対処も「陣地防御」の訓練の中に入っている。

 

メインゲートは重要だ。入り口はHesco Barrier(ヘスコ・バリアー)という土や砂を入れて防護壁になるものがあるのだけれど、それを使って「シケイン」(ジグザグ)を作ってVBIEDがすんなり通る事が出来ない様にする。できればシケインの最初は砂や土ではなくコンクリートが望ましい。1立方メートルのコンクリートは約2トンの重さになるので3メートルのヘスコ・バリアーならそれなりの障害物になる。簡単には突破出来ない筈だ。

車両の検査を怠ってしまってVBIED(自動車爆弾)がキャンプ内に入ってしまうと部隊は大打撃を受けてしまう。検査する場所はキャンプの外で行う。検査をする時は1人の兵士が運転手を見張り、何かあった時にはすぐに銃を撃てる様にしている。もう一人が運転手の身体検査、もう一人が車の検査だ。だが気をつけなければならないのは、車には一切触れてはいけないのだ。どんな仕掛けがされているのか分からないからだ。ドア、トランク、ボンネットなど全て運転手に開けさせる。何か入っていたらそれらを出させる。バッグなども同様に運転手に開けさせる。車両の点検にはたくさんの項目があるのでここでは簡単に。例えば最近修理された跡、真新しい塗装の跡、タイヤの匂い、燃料タンクなどに溶接の跡があるか、バンパーの裏側、シートのクッションなどだ。とにかくキャンプの中にVBIEDを入れてはいけない。必ず阻止しなくてはならない。入り口で爆発して兵士が2、3人死ぬかもしれないけれど、中で爆発して何十人も死者が出るのよりはマシなのだ。それに比べたら少数の敵にキャンプ外から「パラパラ」撃たれるぐらいはなんとも無い・・・。

陣地は4角形が良い。カーブが入ると「死角」が出来る為である。4隅には必ず機関銃座を設ける。メインゲートの両端もだ。機関銃の十字射撃は効果が高いからだ。幕末にペリーが東京湾に入らなかったのは当時の東京湾の砲台の十字砲火を恐れたためというのを読んだ事がある。

長方形でもいいが機関銃が豊富にある場合は良いが、さも無いと一辺が長い部分の防御力が落ちる。

ゲートは表と、裏側にもう一つ設けるのが良い。2つ目のゲートは普段は使わないので閉まっている。これは「いざ!」というときのためのゲートなのだ。敵の攻撃が激しすぎてもうどうにもならない時の「退却用」、見方の「援軍」が来た時に迎え入れる時、また怪我人を戦闘中に「救急搬送」などさせる時に必要だ。メインゲートだけだと、そこを集中的に攻撃されると何も出来なくなるからだ。キャンプを「アラモの砦」にする事はないのだ!

それらを実際の色々なものを使って兵士たちにキャンプもどきを造らせる。それらが出来たら実際にビジター役の兵士がキャンプに来たときの身体検査をやらせる。車で来たならば車両と身体検査を実際に行う。

デモ隊役の兵士がゲートに来た。こちらは兵士のバリケードを作る。指揮官がなんとかデモ隊の指揮者と話をつけて落ち着かせようとする。デモ隊の要求は「食糧」であった。デモ隊の指揮官役の軍曹はなかなか交渉術に長けていて、こちらの「解散要求」をのまない。とうとう食糧を分けるという事で話がついて解散し出した。この様な時にむげに「食糧なら国連のところに行け!」などと言ってはいけない。「自分たちは平和維持の任務で来ている」ということを分らせて「こちらも食料は沢山あるわけではないが何とかしてみよう!」という様になだめる必要があるのだ。デモ隊の指揮者を招き入れて上官と話をさせる手もある。とにかく落ち着かせる事が必要なのだ。約束した事は絶対に守らなくてはいけない。さもないと敵側についてしまってこちらの情報(キヤンプの規模、兵士の数、装備など)が敵側に漏れてしまう・・・。など、各中隊を3日にわたって訓練している。今週はあと2個中隊の訓練がある。来週は試験期間で、各中隊それぞれ「状況」用の命令書を大隊からもらって任務を遂行しなくてはならない。僕らは「試験官」だ。大隊は全員参加だ。

 

新しいホテルについて。なぜホテルが変わったかをルイジに聞いてみた。契約が終わった連中がいなくなり、最初は15人ぐらいいたのが9人に減った。「もう少しホテルをグレードアップしよう!」というボスのジェフの意見らしかった。食事は前のホテルの方が断然良かった。なぜならコックなどは僕らの注文に慣れたので料理がすぐに出てくるのだった。18時30分にと頼んで17時45分に来たこともあったけれど・・・。昨日の夜は初めてだったので、鶏肉をニンニクでグリルしたやつをルイジと頼んだ。17時前くらいか???2人でルイジの部屋でビールを飲んでホテルのレストランに向かった。僕らの前にはトニーが注文して料理が出てくるのを待っていた。聞くと、かれこれ30分は待っているというではないか!僕らのテーブルにジェフとダヴィッドがやって来て座った。僕らの注文はすでに出来上がっていた。なのですぐ出て来たが、トニーの料理はまだだった!結局トニーは1時間待たされてやっと料理にありついたのであった!

今朝の朝食時。トニーが僕の前に来ていた。朝食は宿泊料金に含まれている。注文を取りに来たウェイターはトニーの注文のオムレツを理解出来なくてコックに直接注文したらしかった。僕とルイジが席についてコーヒーを飲んでいるとウェイターがやって来た。今日まで毎日食べていた「ベーコン」は無いと言う事らしかった。なんて事だ!とにかくトニーと同じオムレツを頼んだ。このホテルは僕らみたいな客に慣れていないのは一目瞭然であった・・・。フルーツも今までなら新鮮なパイナップとかバナナとか色々あったのだけれど、ここでは「スイカ」だけでガッカリした。コーヒーも十分な量が無く、ペーパータオルも頼まないと出てこない。一体どうなっているんだ、このホテル???と、昨日からの疑問符が増えることばかりであった・・・。

前のホテルでは、ベッドのシーツの下には毛布があって、エアコンを効かせて毛布にくるまっていたのでよく眠る事が出来た。だがこの新しいホテルではシーツ一枚であった。フロントに行って毛布があるか聞いたら毛布が無いのでこれで我慢してくれ!とベッドカバーを渡された。どうにか一晩過ごす事が出来たけれど、前のホテルの方が良かった感じ・・・。

いい事はネット環境で、接続に苦労する事が無くなったのだけが良い事だった。それ以外は食事の面で問題がありそうだった。ただ、使用人には文句はない。そう言う教育を受けていないだけなのだ。

レストランを出てすぐさま「ピザ」を注文した。僕とルイジが注文したチキンは乾き切っていて最悪であった。おまけに僕のチキンは向こう側が見えるのではないかと言うくらい薄いものであった。一緒に注文した「パン」が無いと言う・・・。町まで買いに行けば手に入ると言うでは無いか!マジか!

と言うことで問題が多いホテルなのであった・・・。部屋自体は一般のホテルと変わりはないけれど、僕らみたいな大人数の客は初めてなのか従業員が戸惑っている様であった・・・。

カードキーについて。この国では珍しくこのホテルはカードキーであった。しかし部屋から出るのにカードキーを抜くと全ての電気が止まるらしく、冷蔵庫の冷たい飲み物が温かい飲み物に変わる。エアコンはもちろん動かなくなる。訓練が終わってホテルに戻っても「暑い部屋」に入ることになり、飲み物は冷えていないと言う事態になる。流石に冷蔵庫ぐらい冷たい飲み物があってもバチはあたるまいに。それをフロントに言うと、今朝早速電気屋が来て、冷蔵庫などのコンセントはカードキーを抜いても大丈夫な様に配線し直してくれた。エアコンは無理だったけれど・・・。

 

このホテルは「NN部隊」はいない。その代わり結構な数の「トカゲ」がいた。ルイジの部屋にも1匹いた。「蚊」を食べてくれるので良いけれど、この数ちょっと多いんじゃないか???

と言うわけで新しいホテルはちょっとイマイチなのであった・・・。

 

読んでくれた人ありがとう

 

 

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