兵士達へ 0−5編 短時間停車
敵地においてIED(即席爆発装置)の危険がある場合、車列指揮官は全ての車両に徹底させなければいけない事がある。車両間の距離などもあるが、各車両は短時間停車の場合は必ず自分の車両の半径5m以内、車両の下などに不審物がないか必ず点検しなければならない。
まず「0」である。一人に指示し、車両の扉を開けて「何処に」自分の足を置いていいのかをまず確認する。そして異常がなけれは初めて車両を降りて地面に立つことが出来る。重機関銃は360°警戒する。他の兵士も車窓から全周を警戒しなくてはならない。
降り立った兵士は車両から「5m」までの距離を目視で不審物がないか点検する。その時体は車両にくっつくぐらい側を歩くのだ。「9時」、「12時」、「3時」の所で一度止まり、車両の下を点検する。その時「9時、異常なし!」の様に自分の場所を機関銃手に伝えなければならない。
機関銃手はその位置を逐次分隊長なりへ報告する。
車両を一周して何も無ければ、これで車両から半径「5m」の安全は確保された事になる。発見しなければならないのは、ケーブルを這わせた跡やワイアーの切れ端、電池のパッケージ、絶縁テープの切れ端など、「IED」に関係する物だ。道路のアスファルトが剥げて水溜りになり易い窪みになっているところなどは要注意だ。簡単に「IED」を仕掛ける事が出来るからだ。そこにビニール袋などがあればほぼ間違いなくケーブルが出ていて「IED」という事が分かる。そういうのを見つけるのだ!
車窓から見ている兵士達の任務も重要だ。「誰か不審な奴が車列を監視していないか?」など気をつけて見なければならない。
兵士達へ 25編 長時間停車
一番オーソドックスな「分隊長」と「兵士2人」の場合
「分隊長」は2人の兵士に指示する。1人目は車両「12時」なり「6時」10mの位置へ着かせる。どちらかにするかはその時の状況による。2人目は「20m」の位置へ。「5m」までは先ほど確保されたので「分隊長」はそれ以内なら自由に動けるはずだ。装甲車の場合後ろから乗り降りするので、「6時」に兵士達を展開させた方が、終わった時に撤収するのが早い。
10mの位置の兵士は右5メートル、左5メートルを車両に沿って点検する。車両から5メートル〜15メートルになる訳だ。20mの兵士は同じく自分の右5メートル、左5メートル、を車両に沿って点検する。車両から15メートル〜25メートルの範囲になる訳だ。2人とも距離が違うので歩くスピードに気をつけなければならない。「分隊長」はよく気をつけて見なければならない。歩くスピードは普通だ。これで1周回ると、車両の半径25メートルが確保された事になる。
これが「0-5-25」である。
「分隊長」と「兵士4人」の場合1
「12時」と「6時」の方向へ先ほどと同じ様に兵士を展開させる。兵士2人の場合に比べて半周でOKだ。
「分隊長」と「兵士4人」の場合2
もう一つは「12時」と「6時」へ兵士2人を10メートルへ、兵士2人を20メートルへ展開する。
準備が出来たら「分隊長」の号令で10メートルの兵士は左右反対方向へ、20メートルの兵士も同様に左右反対方向へ進む。大体「12時」に展開すれば乗車位置の「6時」で終了なのでそちらが好まれる。的に身を晒す時間は減らさないといけない。
そのほか、車列長は以下の事を気をつけなくてはならない。
−地図を精査する。目的地まで危険そうな場所はあるか???
−橋の場所
−車列が通るのに狭い場所
−渓谷
−以前に「IED」の事故はあったか?などだ。以前東アフリカで、僕だけで同じ場所へ5回も出動した事があった。そこは重要な補給用道路だった。「MSR」だった。同僚も複数回その場所へ出動していた。
などである。
通常業務の補給品配送など、知っている道を使う場合も気を付けなくてはならない。特に子供は重要な目印だ。いつも通る村の空き地で毎朝子供達がサッカーなどボール遊びをしているのに、今朝に限って子供が一人もいないなどだ。そういう時は必ず付近に「IED」がある。なぜなら村人は「それ」が埋められているのを知っているからだ。子供にそこには近づくな!と言っているから。ただテロリストの「報復」を恐れて言い出せないだけなのだ。その他いつも開いているパン屋がしまっているとか、通りに車が止まっていない場所がある、学校に人影がない、露天商の数が少ないなど、住民の動向が非常に有効な手掛かりになる。それら全てが「IED」発見につながるのだ!
また通り道に「変に石が積み上げられている」、「木の枝に目立つ色の布が結んである」、「何も無い所に一本だけ杭なり棒が立っている」などに気を付けなければならない。テロリストの「照準用のマーク」であるからだ。そこを車両が通った時にテロリストがそれを目印に「IED」を爆発させるのだ!
木が茂っている所を通るかも知れない。「IED」は地面に埋まっているモノだけでは無い。東アフリカでは木の枝に仕掛けられた「IED」で多くの負傷者を出した。
以上が現在国連で奨励されている車列における「対IED」のやり方である。これは第2時イラク戦争で米軍が編み出した方法と言われている。翌米空軍の戦闘機のパイロットが「敵を発見する一番の方法はレーダーではなくアイ・ボール・マーク・ワンだ!」という事をよく聞くが、「対IED」でも同じ事だ。1にオブザベーション、2にオブザベーションなのだ!人間の「目ん玉」が一番多くの事/物を発見出来るのだ。
僕はそれを何度も授業で繰り返して言う。とにかく任務の時は周りを見ろ!今教えている生徒の兵士達は一応は理解した様だけれど、実際に仲間が「IED」によって怪我もしくは死亡しなければ本当の意味で「理解」しない事は知っている。残念ながらそれが現実だ。だから僕らが訓練して少しでもその犠牲を減らさなければならないのだ。
読んでくれた人ありがとう