B171 漫画の様な黒い雲

1990年5月26日(土)

8時にはすべての出発準備が出来た。何で昨日ここに停車して野営をしたのかと言うと、トラックの燃料が足りなくなったからだった。そのまま進むと何も無い所での野営になるからだった。みんな「行く時に道に迷ったせいだ!」とか「象なんか見に行って燃料を使ったからだ!」とか好き勝手な事を言っている・・・。連絡を受けた基地から燃料の入ったジェリ缶をたくさん積んだ車両がやってきた。トラックの燃料を満タンにして出発した。途中の昼食もそこそこに走り続け、15時過ぎにやっと基地にたどり着いた。10日ほどしか基地を空けていないのに1ヶ月にも感じられた。

基地のゲートを通った時はなんだかとても懐かしい所に来たと言う感じがした・・・。

皆早くシャワーを浴びたいので、急いで装備品や荷物を下ろした。あっという間であった・・・。フランスに比べたらシャワーの設備などあまり立派とは言えないけれど、給水トレーラーの水や、カフェ・オ・レの様な色の川の濁った水ばかりだったので、基地のシャワーの熱いいお湯は全く文句がある筈は無く、改めて基地に戻ってくる事が出来て良かったと思った。

今夜は土曜日、外出だ。ただ僕はアルコール禁止命令が出ているので留守番要員を買って出た。仲間に頼んで買ってきてもらったビールをみんなが出かける時間までロッカーに隠しておいた。みんなが出かけたあと、部屋に一人なのを良い事に、「さて!」と徐にロッカーからビールの1本目を取り出し今日受け取った「シンカイさん」から送られてきた日本の雑誌を眺めた・・・。

 

1990年5月27日(日)

9時半ごろ起きた。各晩は一人だったのを良い事に少し飲み過ぎた・・・。みんなベッドでゴロゴロしている様だった。今日は夕食当番だったので、17時ごろには食堂へ行って皿やフォーク、ナイフなどを並べた。7時前にすべて準備が出来ていた。ただ、夕食時に前菜やメインなど中尉や軍曹達のいるテーブルへ運ばなくてはならなかったので、ゆっくり食べている暇がなかった。明日は小隊のほぼ全員がガードなどの勤務だったけれど、なんと僕はリストには載っておらず、車両整備だった。

 

1990年5月28日(月)

小隊のみんなは今日は勤務でいなく、僕と中国人のメン、フランス人のグエンと3人だけが残っていた。なのでほとんど大した仕事がなかった。夜は酒保に行って今夜のビデオを借りてくる事になった。アセンカオ伍長と一緒だった。伍長が適当にビデオを選ぶのを待った。選び終えて酒保を出ようとした時、ものすごい雨が降り出したので、泥が跳ねるのもお構いなしで二人して全速力で走って宿舎に戻った。

小隊クラブで夕食後ビデオを見るのだけれど、今夜は雨の音がうるさくて、ヴォリュームを上げても聞きにくかった・・・。

日中、雨が降りそうな時にはまず強い風が吹き雷が聞こえる。雷が聞こえただろう方向を見ると青空なんだけれど1箇所だけ漫画の様な黒い雲がある。それがみるみるうちに近づいて来るのだった。ボーイ達は洗濯物を慌てて物干し竿から外し屋根のある所へと一目散に向かう。僕らも最近はそれがわかってきたのでガレージやとにかく屋根のある所へ走る。10分もしないうちに土砂降りになるのでとにかくやっている事を適当に終わらせて走る。伍長達もそれを知っているので何も言わず僕らと一緒に走る。とにかく雨は大敵であった。10秒もあれば全身頭から足まで文字通りずぶ濡れで、それぐらい凄い雨なのであった・・・。雨が降るとその凄さもアフリカにいると言うのを感じる事が出来るのであった。多分どこの国の軍隊、特に陸軍の兵士ほど雨が嫌いな連中はいないだろうなぁなどとぼんやり考えたのだった・・・。

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