番外編 西アフリカ某国の日記 12

2020年3月6日(金)

やっと運転実習だ。僕用のハイラックスと後方にもう一台。装甲車は南アフリカ製の「PUMA」と言う装甲車だ。4輪の兵員輸送用が2台と大きなクレーンがついた6輪のリカバリー用の車両が1台。リカバリー用の車両は本来は車両専用のメカニックが乗る車で、通称「Lot -7 (ロ・セット)七つ道具」と呼ぶのはフランス軍と一緒だった。計3台で運転実習を行う。

酒保の前に8時と言う事だったけれどここはアフリカだ。急いでも仕方がない。一人の下士官に連絡させて次第に集まり始めた。車両はまだ揃っていなかったけれど、タバコを吸っているとしばらくして聴き慣れないエンジン音が酒保の裏手から響いて来た。1台目の「PUMA」が顔を出した。続いて2台目。そしてLot7。車列を組む。

大隊の訓練敷地から三キロほどに高台があり広い荒地があるのは前日偵察していたのでそこへゆっくりと向かう。

各PUMAには車両に詳しい下士官たちが助手席に乗って訓練生を指導する。なので、各自に無線機を渡す。1号車から順にP1「パパ・ユニテ(無線では1の事をUnitéと言う。)」、P2「パパ2(パパ・ドゥー)」、「ロ・7」とコールサインを決めて無線機のテストを行う。僕のコールサインは「KAWA(カワ)」。全員乗車したところで僕もハイラックスに乗り込んで「全車前進!」と無線機で伝えた。

運転実習用に選んだところは凸凹があるけれど、周回できる道があるので訓練に丁度良かった。高台のそばに停車して全員を集めて今日の訓練の目的や運転のコツを教えた。装甲車というものは側で見るより重い。運転席に座って1速に入れて動かして見るとその重さが体感できる。その旨を伝えて最初の生徒たちと下士官たちが乗り込んで発車した。

今日は「第1中隊」を中心に訓練だ。

 

ここの広い荒地の真ん中に高台があって僕はハイラックスをそこへ登って止める様に運転手兼ボディーガードの伍長に告げる。そこからだと3台別々に走っても全ての車両を見ることが出来た。凸凹道を高台の頂上へ向かう。

全ての生徒は大型の免許を持っているのだけれどその殆どは装甲車を運転した事は無かった。なのでまずは発車が大事だった。クラッチの繋げ方がイマイチであまり上手い発車では無かったけれど、そのうちに大体がうまく発進出来る様になってきた。荒地を3台の装甲車が走り回る。近くには環状道路が建設中で、荒地の脇を一直線に通っていたので、何台かはそこも使ってギアのアップダウンを練習していた。気温は次第に40度へ近づいていった・・・。

来週からは日中の運転訓練と夜間の運転も始まる。夜間は通常のライトと作戦用の非常に小さいライトがあるので両方での運転の仕方を覚える。訓練生も休む暇は無いけれど僕だって無いのだ。来週はキツいだろうなぁ・・・。

 

今訓練している「大隊」は6月あたりに「マリ」へ展開する予定なので展開前の訓練は大事だ。こちらも気が入る。僕の専門のC-IEDの訓練では無いけれど、現役の時に部下に教えた様に全てを教え込む。彼らは戦闘地域へ向かうのだ。いい加減な事は教えるわけにはいかない。

 

※安全上国名は明かしません