番外編 西アフリカ某国の日記 10

2020年2月28日

6時半に事務所にスーツケースと一緒に集合。近くの村まで行く。村に着くと3台のバスが止まっていた。首都まで5時間のバスの旅だ。7時にバスに乗り込む。僕らは一応保安要員なので拳銃を携行していたので一番前の良い席に座ることが出来た。足が伸ばせるし前方も見える。先頭のバスに乗った。隣にはアレックス。

発車しても暫くは鉱山の作業用道路を走る。それから近くの村の方に曲がり相変わらずのラテライトの道をすすむ。今朝は早めに起きて荷物を詰めて朝食もいつものメニューを食べた。コーヒーもしっかり飲んだのだけれど、代わり映えのしない景色ばかりで次第に眠くなる。ただし、凸凹道なので、シートに頭を預けることが出来ない。なので寝るに寝られずウトウトしていた。

バスの運転手は慣れているようで、先導している共和国警備隊のハイラックスに引けを取らないスピードで走る。タイヤがパンクしないかと心配になる程だった。

1時間ほど走って休憩になった。ピエロはよほどタバコが吸いたかったらしくバスを降りるのももどかしそうにタバコを出して火をつけた。僕とアレックスは彼のタバコの箱から一本取りまるで深呼吸をする様にタバコを吸った。

再び出発。また1時間ぐらいしてそれなりに大きな街の道路ばたに停車。道路はいつの間にかアスファルトの道路になっていた。共和国警備隊のハイラックスが先導しているので、邪魔な車をどんどん追い抜いって行くのでかなり楽に進んでいく。アフリカにしては道路の状態はいい。なのでバスの運転手はここぞとばかり飛ばすのであった・・・。

12時ちょっと前に首都に入った。道端の雑貨屋が以前来た時を思い出させる。車も普通の乗用車ばかりになる。それととにかく沢山のバイクが走っていた。あちこちに停車して数人ずつ下ろして最後に首都にある会社の事務所前に止まった。そこには僕らを会社の宿泊専用の家まで運んでくれる運転手が待っていた。またもハイラックス。後ろにスーツケースを積み込み宿泊する屋敷までいった。屋敷には休暇を終わって交代するための仲間が3人いたので情報交換をする。みんなロランの仕事の出来なさを嘆いた。会社の上層部におべっかを使いまくり仕事のプランは立てられない・・・。

僕らには何一つ役立つことはしないくせに自分の事は別だ。おまけに頭の中は未だ「外人部隊」で、軍隊の上官の様な話し方をするので皆んなうんざりしていた。休暇が終わった交換要員の中に25年ぶりに顔を合わせた第2外人歩兵連隊出身のバリアがいたので懐かしかった。彼もロランのことは現役時代から知っているので、僕らの話したことに同意して納得していた。

ビールで乾杯して僕らは遅い昼食を取る。ここでのリーダーのフィリップがいない。誰もどこにいるのかは知らなかった。僕は明日から別の会社で別の契約の仕事がある旨をフィリップに説明するつもりだったのだが・・・。

昼食後はシャワーを浴びて少し昼寝をした。夕方になってもフィリップはいなかった。

夕食後、ピエロは21時に空港へ行くので見送った。本来なら僕も同じ飛行機でフランスに戻るのだけれど、明日から引き続きこの国での仕事があるので屋敷に残った。22時過ぎに使用人の携帯電話が鳴り手渡された。ここ首都の会社の事務所の人からで、空港に行かないのは何故だと聞かれたので「都合ができて滞在が伸びる」と言う事だけを伝えた。

フィリップがどこにいるか聞くと、なんと彼は休暇でパリだと言う。皆んな仕事の話をしようとフィリップを待っていたのだ。誰も彼が休暇という事は知らされていなかった。フィリップから Whats Appにメッセージが届いた。なぜ空港に行かないのかと聞かれた。僕の契約は今日で終わりで、明日からはこの国での別の契約があるので滞在が延びることを伝えたのだけれど、何か気に食わなかったらしく以降30分ほどWhats Appに罵詈雑言のメッセージが続いた。

ピエロを空港に送って行った車が戻って来たので運転手に僕の泊まる事になっているホテルを告げ送ってもらった。

明日からだけれどとにかく一泊する所が必要だったので予定のホテルに来た。今夜だけは自費で泊まる。フロントに聞くと明日以降も僕の名前は無かったので、明日は明日の風が吹くと言う事で、フロントでビール2本を部屋まで頼みシャワーを浴びて運ばれて来たビールを流し込み寝た。

 

2020年2月29日

首都で二番目に立派なホテルという事をバーテンダーに聞いた。土曜日なので、欧米の人間がホテルのプールに遊びに来ていた。ここのホテルのレストランはピザも有名なので、とにかく沢山の人たちが遊びと食事に来る所だった。

朝食を食べ終わって一旦部屋に戻り歯を磨いて、タバコが吸いたくなったので、プールサイドへ向かった。その時「Kawa !」と大きな声で呼ばれた。セネガル系アメリカ人のファイだった。以前この会社の契約でベナンの仕事をした時のマネージャーだった。超久しぶりだったけれど全く変わっていなくて安心した。アメリカ軍にいたけれど、元がセネガルなのでフランス語も話す。なのでフランス語で会話した。ホテルの部屋も会社名義にしたので、安心だ。

 

日本人10人ほどのグループが食事に来ていた。JICAという事で、こんな危ない国に来て大丈夫かと心配になった。

夜はホテルのバーでゆっくりビールを楽しんだ。つまみにミニピザや南部煎餅の耳に胡麻をまぶした様なもの、この国で取れたピーナッツでバーテンダーといろいろな話をして結構飲んだので、早い時間だったけれど部屋に戻って寝てしまった。

 

2020年3月1日

ついに3月に突入した。

フランス人の同僚のダヴィッドは昨夜遅くに着いたので、僕は朝食を食べ終わったけれどフロントで彼を呼び出し食堂にいると告げてコーヒーのおかわりをした。しばらくするとダヴィッドがやって来たのでいろいろな昔話に花を咲かせる。それからこれから始まる仕事の話をした。

 

昼食もホテルのレストランで食べた。というよりそれ以外は行く事が出来ない。ここのホテルの警備は厳重だ。なので前回ジェフがここに目をつけて会社の常宿ホテルになったと聞いた。ホテルは慣れているのでゆっくりクローゼットに全てを収納した。なかなか快適なホテルだ。これから1ヶ月ほどこの国にいるわけなので、少しの快適さは必要だ。ただし食事や洗濯物はそれなりの金額なので、手当ては高い。

 

明日から仕事が始まるけれど、以前やった仕事なのでやり方は心得ている。鉱山での仕事のことは既に頭の中には無い・・・。新しい仕事が始まるのだ・・・

 

※安全上国名は明かしません