番外編 西アフリカ某国の日記 14

月曜日からやっと自分の仕事が始まった。2018年と同じ様に「C-IED」(カウンター・IED)のトレーニングだ。今回もここの国の陸軍を訓練する。5月末にここの大隊がMaliに展開する前に再教育が必要なのだ。それと同時に各種の弾薬についても説明する。砲弾、迫撃砲弾からグリネード各種、ロケットなど、EODの教育では無いのでほんのさわりだけれど識別出来る様に授業を行うのだ。いわゆる「不発弾」と呼ばれる物だ。発見次第上官に報告する様に指導する。

アフリカといっても今時の若い兵士はほぼ全員と言って良いほど「スマホ」を持っているので、報告時に出来るなら写真を添付する様にも説明した。写真を撮る時の注意点も説明する。太陽の位置、皆が持っているボールペンやタバコの箱、使い捨てのライターなどを比較のために一緒に写真に収める様になどだ。付近の特徴のある構造物も写真に収める様に説明する。発見場所を特定しやすいからだ。不発弾の周りには一般人や何も知らない兵士が近づかない様にテープなどで境界を作る。特に紛争地に住んでいる住民に被害が出ない様に指導する。特に子供だ。子供の好奇心は無限大なので特に注意が必要だ。ここの軍はEODチームを持っていないので例えばMaliに展開しているフランス軍のEODチームが不発弾の処理のために向かうかも知れない。その様な時のために報告に必要なことを教え込まなければならない。生徒の兵士の数は20人弱なのですぐに顔を覚えられたのはよかった。

授業の説明の最中、「定位置はここだ!」と言って僕は常に生徒を自分の脇へ呼ぶ。僕の脇で今聞いた事や見て覚えた事をみんなに向けて言わせる。そうする事で頭に入るのだ。みんないつ自分が名指しされるかとビクビクしているけれど中々笑える場面が多いので半分ドキドキ、半分笑いながら仲間の説明を聞いている。お陰で生徒の覚えはいい。

 

同僚の数は15人程で、重火器の操作や下士官訓練コース、上級士官訓練コースなど多岐にわたる。オランダ軍が支援に参加しているので、ダニーという軍曹が僕の手伝いをしてくれる事になった。工兵なので、地雷についての授業をやってもらう事にした。フランス語は話せないから、現地人の英語−フランス語の通訳を使って授業した。ダニーも僕の授業の仕方を真似て生徒の兵士を傍に呼んで説明させる様になった。

 

西アフリカとコロナウイルスの情報がフランス海軍のコマンドにいた同僚から毎日入ってくるので今僕のいる某国でも27人の感染が確認された事が分かった。それに加えて1人の死亡も確認されて、首都の駅が憲兵隊によって封鎖された事も知った。

2週間のメディックのトレーニングのために鉱山で一緒だったジャンがやってきたのは日曜の夜の事で、その彼が昨日の夜から咳が止まらないと言って今朝国際医療センターへ行った。フランスから来たのだけれど、彼が乗った飛行機は3時間遅れでこの国首都に着いた。空港で感染したのか?これを書いている時点で新しい情報はない。

世界各国の空港が閉鎖され始めているけれど、僕がフランスに戻るのは4月初旬だ。乗る飛行機はわかっているけれど、乗換する空港が閉鎖されたので、どうなるのかは今の時点ではわからない。それと数日前にフランスでは移動するのには証明書を書かないといけなくなったので、南フランスの僕の所に辿り着けるかも今の所わからない・・・。今回この仕事が終わったら久々に日本へ帰ろうかなぁと思っていたけれど其れさえも分からなくなってきた・・・

 

※安全上国名は明かしません

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