B116 着地の姿勢はカエル

1989年10月10日(火)

今日は市街戦の総まとめだった。あちこちで模擬弾や手榴弾が爆発して耳がキンキンする。こんなに沢山!というぐらい訓練用の手榴弾と沢山の空包を渡された。今まで覚えたテクニックをフルに活用して建物を一つずつ攻略していく。窓から入り込みどこに何があるか大声で外の味方に知らせる。「空の部屋、何時の方向に窓、何時にもう一つ窓、何時の方向に入り口、扉は開いている、扉の向こう登り階段!」と言った具合だ。二人目が入って来た時に戸惑わない様にするためだ。二人目が入ったと同時に部屋の入り口に移動する。次々と分隊が入って来て次の連中が同じ様に進んでいくのだ。そして安全が確保されると次の建物へこれも同じ様にして進んでいく・・・。

 

そのあとは「赤」の残りの障害をやった。高さ2メートルぐらいの所から飛び降りる。着地の姿勢はちょうどカエルの様にして大きく息を吐く。膝が顎を直撃しない様にと、大きく息を吐くのは肺を守るためだった。慣れてしまったので、3箇所飛び降りる所をリズム良く一気にポンポンと飛び降りた。

厄介だったのは、線路のレールを渡る障害だった。カタカナの「エ」をイメージして貰えると分かりやすいかも知れない。上の横棒部分を両手で掴み、足の方は下の横の線の部分を左右から挟む。膝は出来るだけ伸ばして左右に揺れながら体重が片方にしっかり乗る様にして一歩一歩進む。真下を見ながらいつ何時滑るかという恐怖との戦いだった・・・。

 

「la gouttière」(ラ・グチエール)というのも厄介だった。壁沿いに雨樋から流れてくる水が縦に流れる筒状になっているのを登るのだ。「青」の所では高さ3メーターほどであったけれど、「赤」のコースでは10メートル近い高さであった。「青」の所では、もう何千人もやっているので、壁の部分がツルツルで中々上手く出来なかった。なので出来るか心配だったけれど、「赤」のコースは「青」より滑りにくかったので、2メーターちょっとおきにある繋ぎ目で休憩する事も出来たので何とか登る事が出来た。僕にとって最大の難関であった・・・。

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午後は、20メーターぐらい離れた所の間にロープを貼ってそこを渡るという訓練だった。ケーブルと違い、ロープは少し伸びるので、分隊全員で引っ張るのは楽ではなかった。ただ、僕たちは工兵なので、ロープの結び方は問題なかった。ロープが弛まないようにギッチリ結んで一本目を貼り終えた所で全員腕をさすっている。あと2本張らないといけなかった。Vの字になるように張り、お互いが離れないように所々カラビナ付きの短いロープを2メーターおきにつけて完了だ。

その後は一本のロープに滑車を着けて向こう側に渡れるような物を作った。この間は27メートルをケーブルを使って降りたけれど、ここでは高低差がほとんど無いので、ロープで引っ張る事が出来るようにする。やっていることは簡単だけれど、それらを今度は夜の暗闇で出来る様にならないといけない。

 

夕食後にまた集合があった。「コマンド」には昼も夜もないのだった。なんと「青」のコースを夜間にやるのだった。難しい障害はないのだけれど、昼間の「ロープ張り」で腕に全然力が入らないのだった。終わって帰って来たら僕も含めて(当然だ!)何人かは腕をさすったり揉んだりしていた。

 

武器手入れのやり直しをさせられたけれど、なんとか消灯前にベッドに入る事が出来た・・・。

 

 

読んでくれた人、ありがとう