午前中は、プーリー(滑車)やケーブル、VAB(装甲車)のウインチを使って、泥などでスタックした車両をどうやって助け出すかと言う事を勉強した。実際に「ラスコー城」の敷地の裏にある連隊が借りている場所にトラックと装甲車を持っていって装備の使い方をやってみた。それが終わるとランド・ナビゲーション(地上航海術)の授業だった。教範のコピーを何枚かもらった。最初の授業からコピーをくれたら良かったのにと思ったけれど、書かないと覚えないと言うのは日本もフランスも同じようで、とにかくノートを取らされた・・・。
午後は対人地雷について勉強した。地雷と言うと、「ドカ〜ン!」といって体が宙に飛ばされたり戦車などが大爆発をすると言うイメージだけれど、それは映画やテレビの中の世界だけだ。
地雷の目的は、その爆発で敵の兵員や車両を「戦力外」にして戦列から離れさせるのが狙いである。一人が地雷を踏んで歩けないとすると最低2人の健全な兵士がその怪我した兵士を運ばなければならない。戦闘用の装具をつけた兵士は二人の健全な兵士でも簡単に運べない。怪我人の装具や武器も回収しなければならないからだ。通常なら担架を使い4人で運ぶ。そうすると小隊から5人が戦闘から離脱することになる。2人怪我をすると多い時には10人小隊からいなくなる事になるので戦力は大幅に落ちる。
対戦車(対車両)地雷は、映画のように大爆発はしない。戦車のキャタピラーを切るだけで良いのだ。またはタイヤをパンクさせれば良い。戦車小隊は大体が戦車3輌から4輌だけれど、1輌地雷でやられるだけで戦車小隊の戦力は25〜30パーセントも落ちるのだ。ブラッド・ピット主演の映画「フューリー」を観た事がある人ならばこの意味は簡単に理解出来るであろうと思う。キャタピラーは戦車の弱点なのだ。戦車を「戦力外」にするには穴に落っことすかキャタピラーを切るだけで良い。
対人地雷は、ただ単に踏んだだけで作動する物の他に、アメリカがベトナム戦争で使った「クレイモア」と同じ効果のある地雷があった。作動すると60度の扇型の角度で鉄片を撒き散らす方向性地雷と呼ぶ地雷がある。その仕組みや操作方法を詳しく習った。これは、髪の毛程の電気が通っているワイアーが切れると作動するので、敵が通りそうな場所にそのワイアーを張るのだ。その他、普通のワイアーの罠線に敵が引っかかると作動するバウンディング・マイン(跳躍地雷)というのも習った。これは罠線に引っかかると1つ目の信管が作動して地雷本体が地上1メートル程ジャンプする。そして2つ目の信管が作動し本体が爆発して360度の全方向に鉄片を撒き散らす。このタイプは第2時世界大戦の頃にすでにドイツ軍は使用していた。除隊後2008年にエジプトのエルアラメインでの仕事の時、ドイツ軍がいた陣地付近でエジプト軍の工兵が発見した地雷原に20個ほど埋まっていたのを見せてもらった。僕が信管を外したのだが、信管のネジ山はどこも錆びてはいなくピカピカだった。当時のドイツの工作技術の凄さをこの時間近で観た瞬間であった。
夕食後も授業があった。今度は「成形炸薬」についてだった。「成形炸薬」とは、その爆薬の「形状」で硬いものを切ったり穴を開けたりするものであった。戦車の装甲板に穴を開けたり鉄橋の橋桁を切ったりするものだが、これも第2次大戦でドイツ軍がすでに採用していた。用途により大きさが違う物があるので覚える事がまた増えた・・・。
ついでなのでヘルメットについても語ろうと思う。ヘルメットを被っていれば、敵の弾が飛んで来ても大丈夫だと思っている人が殆どだと思う。しかし小銃の弾丸というものはたとえ300メートルの距離でもヘルメットをスポスポと簡単に貫通して抜けてゆく。じゃぁなぜヘルメットをかぶるのか?それは、砲弾が落ちて爆発した時に飛んで来たり落ちてくる「破片」から頭を守るためである。また現代では装甲車に乗る時も被るよう指導される。なぜかというと、装甲車内は装備を置いて固定する器具などの出っ張りが多く凸凹道を高速で走るとあちこちにぶつかるので、頭を怪我しないようにするためである。これは乗ってみるとすぐ理解出来る。いくら装甲車のショックアブソーバーがランボルギーニに付いているメーカーの物であっても凸凹道はとんでもなく揺れる・・・。
今回は専門的な事ばかりだったけれど読んでくれた人ありがとう
日記の欄外に「70210」とあった。これは小隊で支給されたFA -MASの番号だ。忘れないように書いた物らしい・・・