B028 2月26日(日)〜 小隊にて その3 腕立て伏せ

僕たちはまだ何も出来ないし知らないので、何か失敗するとすぐに「à position !」(姿勢をとれ!)の号令が掛かり腕立て伏せをさせられるのだった。一回の腕立て伏せは10回だったり20回だったり・・・。1日に最低でも100回以上やらされた。酷い日には200回は超えていた時もあった。朝5時から夜の消灯時間の22時30分まで何かしらをさせられていたので、タバコを吸う暇もなく、1日5本も吸えなかった。トイレにも満足に行けなかった。夜ベッドに入ると朝はすぐやって来た。しかし、これでも楽な方だと後で知る事になるのだった・・・。

1日に何度も腕立て伏せをやらされ、「en bas !(下!)」、「en haut !(上!)」「en bas !(下!)」、「en haut !(上!)」と言う伍長の声を聞いていると、オバーニュで覚えた「箒」と「雑巾」の次に覚えたフランス語は「上」と「下」であった。

              運転適性検査を受けた。何人かは教習用の車を上手く運転してそれはそれで良い事なのだが、僕は車という物を生まれて一度も運転した事がなかったので、どうなる事か心配だった。僕の番になって車に乗った。助手席にいる試験官の軍曹はイギリス人で、英語で話しかけて来た。「僕は免許は無く車を運転した事が無い。」というと、「わかった。もういい。」と言われエンジンをかける事もなく教習車を降りて次の奴と代わった。そんなだった僕でも今は普通にドイツ車に乗っている。

検査場で、以前に食堂で挨拶された「ウエノ」さんという日本人と少し話す事が出来た。ウエノさんも陸上自衛隊の第1空挺団にいたという事だ。オバーニュにいるビトウさんとカワムカイ君の話をすると、ウエノさんは、カワムカイ君の先輩という事であった。広い様で狭いのがこの世の中だ。

何人かは適性検査をパスして毎日運転の訓練に行くようになった。リスターも入っていて彼も毎日運転の訓練に行っていた。ただ彼はイギリス人だ。イギリスは日本と同じ様に車は左側通行だ。でもフランスはほとんどのヨーロッパの国と同じく車は右側通行だ。フランスには信号の代わりにロータリーが沢山ある。右側通行なので反時計方向に回る。ロータリーには信号がないので他の車がいなければスイスイと滞りなく進む。しかしリスターはそのロータリーに逆走する感じで時計回りの方向で入ってしまって、教官の上級伍長にこっぴどく叱られたと言う事であった。イギリス人のリスターはイギリスの感覚で左を走ろうとしたらしい・・・。

運転訓練に行くもの以外は相変わらず基本教練、フランス語、そして掃除や雑用であった・・・。

ラフォン伍長が医務室へ配置換えになった。

                            読んでくれた人、ありがとう。