B045 3月某日:ロケット実射訓練、手榴弾投擲訓練

朝早くトラックに乗ってカルカッソンヌからそんなに遠くない山奥の射撃場へ着いた。背嚢とFA-MASを分隊ごとに纏めて置き、携帯式ロケットの取り扱いの復習をする。程なくしてロサ・ファテラ上級軍曹の乗ったトラックが来た。トラック一杯にデカいケースが幾つも載っていたので皆んなで下ろす。二人掛かりで下ろしたケースには89ミリロケット弾が二組4発入っていた。まず最初の連中がロケットを射場に持って行き戻ってくる。それから一人1発ずつロケットを受け取り射場へ行った。僕らは射場の後ろ、後方爆風のこない安全な場所で待機していた。

「ドン!」と爆音が響き1発目が発射されたようであった。続いて2発目。撃ち終わった連中が顔を高揚させて戻って来る。次の連中はすでにロケットを受け取っていて準備が出来ているのですぐ交代しに射場へ急いだ。

僕の番が来た。ソバージュと1発ずつロサ・ファテラ上級軍曹からロケットを受け取った。撃ち終わった連中が下りて来たので僕たちは登った。先にソバージュが撃つ事になった。ちょっとビビっているので可笑しかった。後方爆風の凄さを知っているので、射撃監督の中尉より遠くへ移動した。標的は装甲車の残骸であった。「ドン!」。無事発射し終わり僕の番だ。反動はないのは知っていたけれどそれなりに衝撃はある。「ドン!」。砂や小石が舞い上がり顔に当たって痛かったが、それよりも以前に痛めた右胸であった。射場から降りて行くときに右の胸が痛くて押さえていたらマクナマラ伍長にゲラゲラ笑われた・・・。

手榴弾は突撃用の破片が殆ど飛ばずに音だけの軽い手榴弾(OF)と、防御用で破片が飛び散る重い手榴弾(DF)一個ずつであった。投擲場所は、谷になっていてそこに向かって投げる。なので特に結果が見える訳でも無いので呆気なく終わった。

ロサ・ファテラ上級軍曹が持って来たロケットや手榴弾は全て撃ち尽くし投げ尽くしたのだが、今度はそれらの空になったケースを弾薬庫へ返納する。弾薬の管理は厳しい。弾薬庫事務所へ返納するための書類を記入、使用済みのものは空であってもちゃんと返納しなければならない。

射場脇のパーキングでロサ・ファテラ上級軍曹が戻ってくるのを小隊で待っていたがなかなか来ない。午前中は晴れていて暖かかったのだがだんだん曇ってきて寒くなって来た。2時間ぐらい待っただろうか???やっと上級軍曹が戻って来たので連隊に帰るために出発した。

連隊に到着すると武器を返納して装具を置いて集合がかかった。中隊裏の道路に整列する。ブロン伍長の隊歌名の掛け声で僕等の中の一人が隊歌の歌い出しを歌う。「隊歌行進、前へ、進め!」の合図で歌いながら行進を始める。こうして連隊をぐるっと回る事が出来る道路を歌いながら一周する。大体いつもブロン伍長が担当だった。武器庫の前を通り、第1中隊の裏を通る。連隊長がいる司令部の建物の前を通り過ぎ第2中隊の建物を回ると僕らの第3中隊が見えて来る。空いた時間がある時はとにかく歌いながら行進の練習をした。

手紙を書いてもいいという許可が出た。なので早速家へは、無事に外人部隊に入隊出来た事、訓練内容などを書いた。

フランス人のフラトーは3年間手紙も電話も禁止されていると言っていた。ただ特に深刻な表情でも無かったしあまり気にしていない様だった。何故なのかは聞かなかった。

読んでくれた人、ありがとう。