先週と同じく午前中は連隊の中にある屋内射撃場で200メートルの射撃であった。3発ずつ数回に分けての射撃で、まず標的に入ればいい方、入るならばどれぐらいの集弾具合かを見られる。ここの射場にはどこにあたったかがわかるようになっている機械があって何人かはこっぴどく軍曹に怒鳴られていた。
午後はまたビュルネルまで行ってパルクール・ドゥ・コンバッタン(障害走)であった。それぞれの障害を超えるテクニックを覚えなければならないので何度も何度も繰り返し体が覚えるまでやった。大変だったのは、横幅2メートル、厚さ5センチ、奥行き50センチの板が2メートルの高さにある板の障害であった。もちろん下を潜り抜けるのではない。その上を乗り越えてゆくのだ!独特のテクニックがあり、僕はそれをマスター出来なかったが、乗り越える事だけはなんとか出来た。
バスで再びレイサックに戻った。待っているのは銃の手入れだ。前回同様消灯時間を過ぎている。伍長達がまず点検してまぁまぁの出来であれはロサ・ファテラ上級軍曹の点検を受ける。今夜は何度もやり直しをさせられた。先週の手入れは大目に見てもらったけれど、今回はそれはないだろうと思っていた。僕らは気を引き締めて手入れをした。ついにロサ・ファテラ上級軍曹の点検の時が来た。相変わらず無言で手入れの具合を見て回っている。しかし前回より時間をかけているのは明らかだった。イギリス人のネイピエの相方でフランス人のポルシャスの銃を上級軍曹が見て何か言ったのだが彼は自分の手入れに自信があったのかロサ・ファテラ上級軍曹に口答えをしたのだ。上級軍曹は顔色ひとつ変えずにこの部品はここが汚れている。これはこことここが手入れされていないとポルシャスを問い詰める。ポルシャスは以前フランス正規軍にいたのでFA-MASの手入れの仕方は知っていた。しかしロサ・ファテラ上級軍曹に向かっての口答えは許されなかった。なおも上級軍曹に指摘され続け、遂には完璧にキレてしまった!「これ以上どこをどう手入れするんですか!」と言ってしまった。食堂の椅子を取っ払って手入れをしていたのだが、立ったまま全員凍りついた瞬間だった。「オイルを塗れ!」と言ってからロサ・ファテラ上級軍曹はポルシャスを外に連れ出した。
意外と早くポルシャスは戻ってきた。ネイピエが彼の代わりに彼の銃にオイルを塗っている所だった。ポルシャスの様子は相変わらず不満顔だったが別に歯が折れている訳でもなく鼻血も出ていなく、ロサ・ファテラ上級軍曹に何を言われたのかは分からない。
銃を武器庫にしまってから少し空いた時間があったので、建物の端で何人かはタバコを吸ったりしていた。ポルシャスもいた。何人かのフランス人同士で集まっていて、その様子からさっきの一件について不満をぶちまけているらしかった。
外人部隊には理不尽な命令などが数多くある。階級が低いうちはそれに慣れないと5年間の契約は務まらないのだ!おまけに僕達はまだ正式な「外人部隊兵」ではない。僕はサイモン・マレーの本を読んで新兵訓練は辛くて厳しいというのは覚悟をしていた。彼のいたアルジェリア戦争の時代に比べたら僕らの方が楽なんだろうなぁといつも考えていたので、今思うとそのお陰で我慢が出来たのではと思っている。
読んでくれた人、ありがとう。