最初の本格的な行軍があった。「Raissac」(レイサック、フランス南西部ミルポアの北)からカステルノダリーの連隊まで歩いて戻るのだ。戦闘服に装具をつけ背嚢を背負いFA-MASを持ち各分隊に分かれて時間をおいて出発した。
午後の日差しは暖かく、次期に汗ばむ程になった。
平地は殆ど無く、でもアスファルトの道路脇を歩いた。足の具合がなんかおかしい。まだ大して歩いていないのに、もうつま先のあたりが痛い。歩きながら何でだろうと考えていると、オバーニュでの新品の装備支給の時の事が浮かんだ。
フランスの靴の表示は「cm」で表す日本と違い、一体どのサイズが自分にちょうど良いのかが分からなかった。補給庫で「42(約26・5」を履いた時爪先に余裕があり過ぎたような気がした。確かにその時履いていた例の「黒と茶色」の靴下は使い古した薄い靴下であった。だから「41」に交換してもらった。これが失敗だったのだ。ある丘を越えると連隊が見えた。しかしまだまだ遠い。レイサックからカステルノダリーまではだいたい25Kmという事なのでそんなに長距離では無いのだが歩く度に気が狂いそうな痛みで、今膝から下を切り取ったらどんなに楽だろうか???とばかり考えていた。それと共になぜサイズの小さい半長靴に変えてしまったのかという後悔が溢れ出てくるばかりであった。あまりの痛さに2、3歩あるくごとに呻き声が出た。
その後しばらくして途中除隊者が出たので2足共そいつの「42」のサイズと交換してもらい、それ以後の行軍は何の問題もなかった。それでも新兵訓練が終わって一般の連隊に配属になった時にはさらにサイズの大きな「43」を履いていた。
市販のスポーツシューズ用の中敷を入れて履いたので除隊まで非常に快適であった。
やっとの事で連隊に着いた。脱落者は出なかった。正面ゲートの所で隊列を組み、中尉が歩調をとった。そしてそのまま武器庫へ行き銃を返納した。
部屋に戻って足を見たら両足のつま先が真っ赤になっていた。しかし皮も剥けていなく、わずかに左足の裏に小さなマメが出来ているだけであった。中にはひどい靴擦れや沢山マメを作ったヤツもいて僕はこれだけで済んで良い方であった。
夕食はレーションでガッカリしたけれど、熱いシャワーを浴びてベッドに入った時にはまるで天国にいる様であった。
読んでくれた人、ありがとう。