B031 野外訓練第1週目 その1 初の野営

宿舎の周りは農地で何もなく短距離の行軍なら何も問題はなかった。途中一回休憩して宿舎は見えなかったが敷地内の今夜の野営地に着いた様だった。僕はソバージュとそれぞれテント半分ずつを出して皆と同じ様にテントを張った。テントは三角の布4枚、木製の4分割の支柱、ペグ数本で、それを2人で分けて持ち運ぶ。テントの布2枚ずつだ。テントをたてると綺麗な4角錐になる。

一通り終わると焚き火用に枯れ木を集める様に命令が下った。まだ夕方前で日が高い。外人部隊では野営の時、必ず焚き火を焚く。それも日没の前から朝の起床まで火を絶やさない。翌朝はその火でコーヒー用のお湯を沸かすのだ。なのでそれに必要な枯れ木の量はパンパではない。皆あちこちに散らばり枯れ木を探した。赤ん坊の頭ぐらいの石を集めて半径2メートルぐらいの円状に置き、その中に枯れ木を山にして火を付ける。

夕食は携帯食料(Rationレーション)であった。一箱で1日分の携帯食料を2人で分ける。ロサ・ファテラ上級軍曹が箱を開けて中身の説明をしてくれた。固形燃料も入っているので温めて食べることも出来るし、コーヒーやココアも入っていた。

携帯食料は全部で10種類あって、今夜僕とソバージュのやつはポークアンドポテトがメインで入っているやつであった。テントの中でソバージュと半分にして食べようとした時コンプ軍曹がやって来て僕らのテントの中を覗いた。「携帯食料は温めて食べろ!」と言われた。他のテントでも言っている。

フランス軍の携帯食料は、ビスケット(乾パン状の薄いもの)、小さめの缶詰(パテやツナ、サーディンなど)がどれか一つ、粉末のコーヒー、ココア、紅茶、ミルク、スープなど一袋ずつ、砂糖、塩、胡椒。チョコ、キャラメル、ガム、ヌガー、小さいパッケージのティッシュ、固形燃料、マッチなど沢山の物が入っている。

年々種類が増えて、メインの料理も大きいのが1個から中ぐらいのが2つになった。今だに思う事だがフランス軍の携帯食料は世界で一番いいと思う。確かに箱は大きいし重いけれど1日分である。最近は、携帯食料に入っているメインの缶詰はスーパーでも手に入る。それぐらいの味だ。自衛隊の缶メシとは雲泥の差であった。今は自衛隊の携帯食料も大分改良されて良くなっているらしいと聞いた。

湾岸戦争の時、アメリカ兵は使いやすくて小さく折り畳めるベッドを持っていたが、携帯食料に関しては皆辟易していた。反対にフランス軍は、まぁまぁ悪くない携帯食料は持っているが、重くて嵩張る折り畳みベッドであった。フランス軍の携帯食料は彼らアメリカ軍にとっては垂涎の的だったらしい。そうなると、兵隊同士話は早い。フランス軍兵士は自軍の携帯食料何個かとアメリカ軍の折り畳みベッドの交換を持ち掛け交渉成立。噂はたちまち広がりあちこちで交換が行われたという事であった。

食事の後は焚き火を囲んで各国の出身者の国の歌を歌えと言う事になった。僕とビトウさんは「同期の桜」を歌った。

                            読んでくれた人、ありがとう。

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