ここオバーニュの第1外人連隊の補給庫に連れて行かれ、支給される戦闘服や半長靴、「ケピ」(制帽)のサイズ合わせをした。引率の上級伍長が皆の周りを回ってサイズが合うかどうか確認している。サイズが「42(約26センチ)」の半長靴が僕の前に他に支給品と共に置いてあった。例の「黒と茶色」の靴下で履いて見たところまだ新品の半長靴は固かったがいい感じのよう思ったけど少し爪先に余裕があったので「41」に交換してもらった。これが後の新兵訓練での悲劇の原因になる。
一通り終わるとその全てに自分の名前が書いてある紙をホチキスで留めた。目の前の支給品を見ていると、やっと入隊まで漕ぎ着けたと言う感じがした。「黄色」になったのに返された連中も何人か居たので、そうならなかったことに感謝した。
僕ら「赤」に各自タバコが5箱支給された。サイモン・マレーの本では取られた私服の代わりにタバコが支給されたと書いてあったけれど、これがそうなのかなと思った。実際はこの時よりもっと前、フランス軍ではタバコは支給品の一つだと言う事だった。中隊事務に申告して週単位だか月単位だかで支給されたらしい。今回のは銘柄はフランス製のGauloises「ゴロワーズ」だったが、市販品の立派なヤツでは無く、紙を纏めたフィルターが付いている安い物だった。しかしタバコを切らしてもう何日も経っている僕は 、煙が出るなら何でもいいと言う状態だったので、早速一本点けて、次いつタバコが手に入るか分からので、フィルターギリギリまで大事に吸った。
バスで結構離れた所の掃除などに駆り出された事があった。到着すると空いている部屋の家具を出しての大掃除であったので、なかなか大変だった。その場所は「Puyloubier」(ピュロビエール)であった。ここは外人部隊を除隊して身寄りの無い者や、戦闘で負傷して働けなくなった者が入所出来る場所だった。周りは外人部隊が所有するぶどう畑で、体の動く連中がワインを作るために働いていたり、そうで無いものはお皿や陶製のビールのジョッキに外人部隊の絵を描いたりしていた。それらの製品はここの売店か外人部隊の「酒保」でしか手に入らない。
掃除をしていると、僕ら若い連中を見て昔を思い出したのかニコッと笑ってくれたり、タバコをくれたりした。
読んでくれた人、ありがとう。