B012 1989年2月4日(土)日本人部隊兵

昨日同様朝5時に起こされる。ここでは僕らは5時起床のようだ。

朝食のあとはその後片付けに回された。ウドゥニと言う奴がやたらと親切にしてくる。何かウラがありそうな気もしたが、奴はフランス語を話すので、次に何をしたらいいのかなどを身振り手振りで教えてくれるからまごつかなくて済む。しょっ中「Japonais! Japonais !」(日本人、日本人!)と言って近寄ってくる。なので仲良くするフリをしていた。それから、「偽名」をもらって喜んでいる「ソバージュ」(Sauvage=野性)と名乗るフランス人とも挨拶するようになった。まだ17歳という事だ。僕が辞書を見ていると、「私は〜」とか簡単なフランス語を教えようとしてくれた。しかし四六時中タバコないか???と言ってくるので少し鬱陶しかった。こいつがのちの新兵訓練で僕の相方になるとはこの時はまだ知らなかった。「外人部隊」の新兵訓練では、フランス語を話すやつと外国人を組ませてペアにしてフランス語を学ばせる。ペアなので片方がヘマをすると連帯責任で両方腕立て伏せの罰を受ける。奴のせいでかなりの数の腕立て伏せをやる羽目になるのだがこの時はまだそんな事が将来待ち受けているとは僕は知る由もなかった。

この日は昼も夜も食事の片付けをさせられた。なぜかウドゥニが僕の事を後片付けに誘うのだ。別に大した仕事ではないのだが、やらなくていい雑用ならやらないに越したことはない。それに奴もタバコをせびり始めた。

ここでの食事は悪くない。今までの人生で見た事がない料理ばかりなので不味いとは思わなかった。だが何しろ朝・昼・晩の食事以外は何も食べる事が出来ない。朝食の時以外コーヒーさえ無いのだ。なので寒さのせいもあって僕らはいつも腹を空かしていた。

また昼食の後片付けだ。その時いきなり「日本人?」と日本語で話しかけられた。なんという事だ!こんなところで日本人の外人部隊兵に会うとは思わなかった。シンカイさんと言って階級は伍長との事だ。ほんの少しの時間であったが外人部隊について教えてもらった。彼に「外人部隊は雑用が多くて日本に帰った方がいい!」と言われたが、僕は他にどうしようもないので、「志願します。」と言ったらそれ以上何も言わなかった。シンカイさんは今休暇でここの要塞にある外人部隊の休暇者用の所に泊まっていると言う。僕たちが食事に行く時にその前を通る、隣の建物だった。

所属はオバーニュ(Aubagne)の第1外人連隊だと言う事だ。入隊のために僕はそこに行かなければならないので、また会う機会があるかも知れない。

                            読んでくれた人、ありがとう。

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